なぜ、最長片道切符の旅を実行しようとしたのか?
学生の間にしかできないことをしたい!
2021年5月29日。
院進という選択肢を捨てて鋭意就職活動中の私は、アニメ『宇宙よりも遠い場所』の4周目の視聴をしていた。この作品は、簡単に言うと女子高生が南極を目指すという挑戦をし、実際に南極に行くという「青春」を見つけるという内容である。
私はこの作品が本当に大好きであり、いつものごとく目頭を熱くしながら視聴していた。同時に、学生生活(当然「高校生活」ではない)の終了を翌年3月に控えていた私は、このようなことを思ったのである。
「自分も学生のうちに、何か大きなことに挑戦したい!」
「学生の間にしかできないことをしたい!」
「……というか、今のうちに何か大きなことに挑戦しないと、将来後悔してしまうのではないか?」
さて、その「大きなこと」「学生の間にしかできないこと」として、具体的には何があるだろうか。
残念ながら、「南極に行く」というのは全く現実的ではない。南極に行くほどではなくとも、あまりにも多額の金がかかるorあまりにも長期間にわたって連続して拘束されるものは、貯金に限りがある/卒業当日まで大学関係の仕事(大学公式の行事の運営)を抱える私にとって困難であった。
ここで私が思いついたのが、「最長片道切符の旅」である。
最長片道切符の旅。それは全長1万km以上にも及ぶ旅程を、有効期間50日以上の切符で旅する壮大な挑戦である。「最長片道切符」は主に3パターン(JRの鉄道路線のみ、BRTも含める、通過連絡運輸の使用可能な私鉄・第三セクターも含める)あり、私はこのうち最も長い3つ目「IGR版」を採用することとした。
切符の有効期間があるため、まとまった休みが取れない限り実行は難しい。そしてその「まとまった休み」というのは、社会人になったら容易に取ることは困難であろう。だからといって定年退職を待っていると、体力的に旅の実行が困難である。すなわちこの挑戦こそ、学生時代に実行すべきものなのである。
この旅の終着点である肥前山口駅には、記念碑的なものがある。私は大学1年の時に青春18きっぷの旅で肥前山口駅を訪問しており、それを目にしたことがあった。
また、サークルの先輩や後輩がこの旅を実行しており、私はその記録を見ていた。この最長片道切符の旅というのは、決して珍しいものではなく、かなり多くの人が挑戦している。
そのようにして私は最長片道切符の旅について知っていた。……しかし、まさか自分が実行するとは思っていなかった。
……学生のうちに実行しなかったら、今後後悔するかもしれない。
……これは自分も実行するしかないな。実行しよう。
それでは、いつ実行するか?
大学の講義はほとんどがオンライン、かつ私は卒業に必要な単位を卒業論文以外は取得しきっていたので、長期休暇中でなくても実行は不可能ではない。しかし私は講義を受けることも「学生の間にしかできないこと」と捉え、大学4年の間も積極的に講義を履修することにしており、複数の講義の受講と移動を並行して実行することは非効率である。
長期休暇であれば、まず夏休みがある。しかし私は6月時点で十分な貯金を抱えておらず、また対面のアルバイトを抱えており、夏休みに実行することは資金と休暇の取得という両面において課題があった。
そこで私は、対面のアルバイトを春休みまでに辞め、その後に最長片道切符の旅を実行することとした。
乗りつぶしも兼ねて
就職活動が佳境を迎えていた2021年6月下旬から7月上旬。
「学生の間にしかできないこと」として私は、離島への長期滞在も考えた。その離島として具体的には、本土から渡るのに非常に長い時間がかかる小笠原諸島と、総務省の「ふるさとワーキングホリデー」制度で働きながら滞在することができる粟島(新潟県)を考えた。春休みは最長片道切符の旅を実行するため十分な時間が取れないと判断し、この離島どちらかへの訪問を夏休み中に実行することを計画した。夏休み中はアルバイト(先述のものとは異なる)など個人的な事情があったため、それらと折り合いがつけられる9月上旬で実行することとした。
同時に私は、LCCのピーチ・アビエーションが航空券のセールを実施していることを知り、これは使わないとなーと考えてしまった。夏休み中はアルバイトなどの個人的な事情や離島訪問があるため、ピーチ・アビエーションの航空券は10月下旬に取り、そのタイミングで北海道旅をすることとした。北海道旅は5日間を予定しており、5日間程度なら講義をオンラインで受講しつつ効率的に旅できると考えて、長期休暇でない10月に実行することにしたのである。
就職先が決定した後の2021年8月下旬。
9月上旬に予定していた離島への長期滞在。粟島にはコンタクトを取っていたが、先方から連絡がなく、「ふるさとワーキングホリデー」の枠組みで行くことを諦めた。小笠原諸島は行く気満々であったが、改めて費用を計算したところ非常に金がかかることを痛感し、社会人になって金を貯めてから有給休暇で行くこととした。すなわち私は、9月上旬の離島滞在を中止したのである。
10月下旬の北海道旅。航空券を取っていた帰りの便(女満別空港→成田空港)が、予定していた日に限って欠航することとなった。欠航となったので、同じ区間に別の日程で搭乗することが可能となった。
これらを踏まえた上で私は、離島滞在を中止した9月上旬において、帰りのみピーチ・アビエーションの便(女満別空港→成田空港)を使うような旅を実行することとした。代わりに予定が変わった10月下旬の北海道旅では、北海道を出る手段は新日本海フェリーにした。
では、この(帰りに女満別空港→成田空港の便を使う)9月上旬に実行する旅では、具体的にどのようなところを巡ろうか?
ところで私は「乗りつぶし」という不都合な趣味を持っており、学生の間にできるだけ多くの路線に乗車することを目指していた。この時点で私が乗車したことのないJRの鉄道路線・BRT路線は、以下のような感じであった。(図に日高本線の廃止区間を入れたままだった……。)
このうち最長片道切符(IGR版)で通るのは、以下の区間である。
・大館→川部(奥羽本線)
・新庄→横手(奥羽本線)
・横手→北上(北上線)
・長岡→新潟(上越新幹線)
・吉田→柏崎(越後線)
・津山→新見(姫新線)
・新見→倉敷(伯備線)
・広島→三次(芸備線)
・居能→小野田(小野田線)
この区間については、以下の図で赤線で示した。
そして最長片道切符の経路にない、すなわち最長片道切符の旅をこなすだけでは乗りつぶせない未乗区間(青線/薄茶線/橙線で示した区間)は、とりわけ東北・北海道に多かった。
そのため(帰りに女満別空港→成田空港の便を使う)9月上旬に実行する旅では、東北・北海道の未乗区間を乗りつぶすことを目的とし、実際に以下の区間(青線で示した区間)を乗りつぶした。
・新庄→余目(陸羽西線)
・秋田→横手(奥羽本線)
・野辺地→大湊(大湊線)
・大沼→森(函館本線:最長片道切符で通らない方の経路)
この東北・北海道旅を実行したことで、最長片道切符の旅をしつつ寄り道することを通し、学生のうちにJR全路線完乗を達成できる可能性が俄然高まった。
その後10月の旅と11月の旅で、以下の区間(薄茶線で示した区間)を乗りつぶした。
・広島→徳山→博多(山陽新幹線)
・徳山→岩国(岩徳線)
・深川〜留萌(留萌本線)
・新花巻〜釜石(釜石線)
・盛岡〜大曲(田沢湖線)
・北上〜盛岡(東北新幹線)
・越後湯沢〜長岡(上越新幹線)
・琴平〜後免(土讃線)
・(武蔵小杉〜)鶴見〜羽沢横浜国大(相鉄直通線[東海道本線])
最長片道切符の旅をしつつ、これらの区間を乗りつぶせば、学生のうちにJR完乗を達成するということになる。そこで私は、この最長片道切符の旅ではこれらの区間も乗車することを目標、というか必須条件とした。
(実はこれでも、本四備讃線の児島〜宇多津の宇多津駅付近(デルタ線の一部)だけ残っている。ここは別のデルタ線を経由する児島〜坂出を乗車したことがあり、この経路は規則上は宇多津駅を経由する(ただし現実にはデルタ線なのでホームは通らない)ということになっているので、「まあ乗車したってことにして良いでしょ!」と思って乗りつぶし対象には含めなかった。)
そうして、最長片道切符の旅について、この乗りつぶしのための「寄り道」も含んだ旅程を考えていくこととした。旅程策定については次の[雑23]および[雑24]で触れる。
utok-travelandthinking.hatenablog.com
utok-travelandthinking.hatenablog.com
このようにして私は、最長片道切符の旅実行の日を迎えることとなる。