どこかの元T大生の思考

不定期です。旅行と考えることが好きな元T大生が、たまーに駄文を公開します。旅の記録を語る[旅]、何かに対する見解や主張をぶつける[論]、自分の生き方について思いを巡らせる[憂]、趣味などについて書き散らす[雑]の4つのカテゴリーで。

[雑42]観たものをひたすら述べていく⑥

この記事の意味については、これまでの記事を参照されたい。

utok-travelandthinking.hatenablog.com

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コロナ禍最初の2020年3月28日からの間に視聴したアニメ作品について、これまで「観たものをひたすら述べていく」の記事で5回に分けて書いてきた。そしてちょうど4年となる今、ちょうど視聴タイトルが200となった。

特に今回は、過去に視聴したイチオシの作品について再度視聴しオタク語り長文を生み出したので、ここで放出しておきたい。

 

※以下の内容は、完全に個人の主観によるものであり、特定の作品について批判することを目的とするものではない。また私はとてつもなく雑な人間なので、「やる気のある時に書いた感想」「やる気のない時に書いた感想」でとてつもなくばらつきがある。物によっては「感想」と呼ぶにも恥ずかしいレベルのものもあるが、ご容赦いただきたい。気になったら自分の眼で確かめるのが一番。

 

 

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……と行く前に、今回は本編17タイトルだけで若干少ないので、ちょっと「イチオシオリジナルテレビアニメ」を語らせていただきます。最後には「イチオシアニソン」を書いておきます。

 

イチオシオリジナルテレビアニメ

原作ありの作品や話題になる映画より知名度が低いと思うので、語らせてくれ。ここでは語れていないが、比較的知名度の高い『まどマギ』『あの花』『ガルパン』『PSYCHO-PASS』『ゆゆゆ』『はいふり』『リコリコ』も名作なのは間違いない。○囲いは紹介記事の番号。

○17. 宇宙よりも遠い場所(2018冬)①④:「質の良い感動ができる作品」

 恋愛要素ナシでここまで泣ける作品はそうそう無い。恋愛要素もグロ要素もなく(人の○は示唆されるが)、挑戦や愛や友情や一途な思い、そういう大切なものが1クールだけの作品にギュッと詰め込まれている。「私の青春見つけた」物語ではあるが、挑戦を忘れた大人が見ても非常にグッとくるし、友情を描いている点で子供にも自信を持ってオススメできる(Eテレで再放送をやっていた)真に全年齢対象の作品。

○63. Angel Beats!(2010春)②:「キングオブ泣きアニメな作品」

 麻枝准泣きゲーを原作とする2000年代の作品同じく、「死」を前面に出しつつ愛(単なる恋だけではない)を描く、キングオブ泣きアニメといっても差し支えないであろう作品。登場人物が多くその生前の不遇が丁寧に描かれるから、1クールのみながら泣きの要素が非常に多い。5年後の『Charlotte』(2015夏)は少し泣きアニメ要素をマイルドにしているが、同じくオススメ。

○69. 花咲くいろは(2011春〜夏)③⑥:「学生にも社会人にも深く響く作品」

 私がイチオシしているのは本記事の本編を見れば分かる通り。高校生の青春×熱血仕事もの×ノスタルジーなので、色々な意味で響いてしまう。私の好きなタイプである「朝ドラっぽいアニメ」はこの作品が最初か。また何度でも言うが、地域に新たな祭りを作り出したという点でコンテンツツーリズムの特異点でもあり、将来にわたって語り継がれるべき。復興応援の一環として今月(2024年3月)31日までYouTubeにて全話公開中。観てね。

○70. あの夏で待ってる(2012冬)③:「オタクの好きなポイント盛りだくさんの作品」

 「高校生」「夏」「謎の少女」「映画撮影」「恋愛と嫉妬」「別れ」といったオタクの好きなポイント全てを詰め込んだイカれた(褒め言葉)作品。OPもEDも曲がエモめなので覚悟して視聴しないとやられる。「嫉妬」を除外すれば『神様になった日』(2020秋)もこれに近い(こちらは評価高くないし私へのダメージも大きくない作品でしたが……)。

○142. プラスティック・メモリーズ(2015春)⑤:「1話で泣ける作品」

 多くの「泣きアニメ」は徐々に泣ける要素が現れてくるが、プラメモは1話からガチ泣きである。(言い方悪いが)手っ取り早く泣くにはこの作品の右に出るものはない。1話の時点で心の準備ができるのでその点でも優しい。

○149. サクラクエスト(2017春〜夏)⑤:「本当に勉強になる作品」

 まちおこしのために作られた、でなくまちおこし「をテーマにした」唯一無二の作品。富山県にオフィスを置くP.A.WORKSだからこそ作れる作品。『SHIROBAKO』(2014秋〜2015冬)同じく日常系っぽく仕事風景を描く「朝ドラっぽい作品」の極致であり、さらに過疎化・少子高齢化という社会問題をライトに扱うからこそ、子供にとってはあまり面白さを感じられないが大人にこそ響く作品だと感じている。下手な新書よりよっぽど勉強になる。

○174. Just Because!(2017秋)⑤:「青春コンプ狙い撃ち作品」

 『あの夏で待ってる』の強化版。「謎の少女」がおらずファンタジー性が薄れている上にOP映像の一部分も凝っており、高校生主人公かつ大学受験がテーマのため幼い中学生主人公の『月がきれい』(2017春)以上にダメージが大きい、本当に狙い撃ちのような作品。

○193. 色づく世界の明日から(2018秋)⑥:「優しさに包まれたタイムリープ作品」

 タイムリープものは大抵「過去を変える」主眼だが、一方でこの作品は「今の自分を変える」主眼。だからこそ、決して軽くない内容でありながらも、優しさに包まれた作品である。P.A.WORKSの緻密な背景作画(『凪のあすから』(2013秋〜2014冬)もオススメ)があって極めて美しい作品。

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それでは本編へ。

 

5'. PSYCHO-PASS3(2019秋)

OP…A14

ED…A4

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度…☆

心えぐり度…☆☆

4年前に「3期はまだ観てない」としていた作品の3期をようやく視聴。「シビュラシステム」により「犯罪係数」が可視化され「潜在犯」が「執行」される近未来のお話で、3期では1期主人公の常守が退き2期主人公の霜月が昇任した後の話。設定が複雑なため考えながら視聴しないと内容を理解できないが、根はいわば刑事ドラマである。……にしても、普通に治安が悪すぎ。シビュラシステム自体は「障害の医学モデル」「障害の社会モデル」の話に通じるものであり、「障害の社会モデル」の方を推す私としてはこのシステムはどうかと思うところがある……がそれとは全く別に、3期時点でのホログラム技術は良いなと思うものである。

 

56. 凪のあすから(2013秋〜2014冬)

OP…A2、A24

ED…C2、C2

次回予告…OP曲+シーン重ね+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度…☆☆

心えぐり度…☆☆

凪あす。凪のearth color(?)「エナ」を持ち海の村で暮らす中学生と、陸の中学生らとの交流を描く作品。岡田麿里脚本らしく超ドロドロ、マセガキども。1クール目から2クール目の切り替えが良い作品(『白い砂のアクアトープ』同様の場面大転換とメインヒロイン変更)であり、既にドロドロの1クール目を経て2クール目で本領が発揮される。2クール目はOPとEDが神で、OPアニメーション最初の各登場人物の目線は要チェック!だし、ある時点からどちらも映像が変わるの最高。要を推せ。内容はもちろん作画も非常に緻密であり、P.A.WORKSオリジナル作品の中では最も評価の高い作品ともされる(個人的には「お仕事シリーズ」及び『色づく世界の明日から』の方が推しだが……)。祝・10周年、聖地の熊野市にてイベントを実施したとのことだが……地理的条件ゆえに国内にしては聖地巡礼のハードルがかなり高い作品。1期はOPジャンプ系作品。

 

69. 花咲くいろは(2011春〜夏)/花咲くいろは HOME SWEET HOME(2013/3)

OP…A1、A1

ED…B2、B2

次回予告…BGM+シーン重ね+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度…☆☆

心えぐり度…☆☆☆☆

イチオシ作品です。

「めげそうで、しょげそうで、泣きそうでも、咲きそうだから」「私……輝きたいんですッ!」「この場所が、私のいつもだから。このいつもを選んだのは、誰でもない、私だから。」「自分の進む道をすぐに見つけられる子もいれば、もっと高いところに登って初めて道が見えてくる子だっているさ。回り道をしてもいい。間違った道で迷ってもいいんだよ。」「若さとはそういうこと。たとえつまづいても、迷っても、恐れずに新しいものに挑戦し、新しい何かを作り出すことができる。」「自分だけの夢を持てない、走れないけど夢を持っている人に一生懸命ついていくこと、それが夢になる人だっているんだから。」

花いろ。温泉旅館で働く少女たちの物語。「いろは」は登場人物の名前では無いので注意。

P.A.WORKSオリジナル「お仕事シリーズ」第一作(以降『SHIROBAKO』『サクラクエスト』『白い砂のアクアトープ』『駒田蒸留所へようこそ』と続く)であり、仕事の醍醐味を伝えてくれる作品。『サクラクエスト』同様、言ってしまえば朝ドラ風でありアニメらしさ全開ではない作品、だからこその名作。私が一巡目を視聴したのは学生時代だったが、アルバイトでなく本職として仕事に向き合う社会人になってから二巡目を観ると、また違った想いが湧いてくる。仕事に誇りをもって真摯に向き合う姿に、こちらも頑張ろうという気持ちになる。そして同時に、「お仕事シリーズ」の中でも本作は女子高生主人公(かつ岡田麿里脚本)のため、恋模様含めて青春の眩しさをも味わえる(岡田麿里脚本なのでドロドロですが……)。望んでその環境に置かれたわけでなく、また大切なものと離れ離れになっている環境、しかしその環境もまた大切なもの、そういう時にどう考えるか……。一方で第7話や次郎丸登場部分のようにギャグ要素も少なくなく、バランスの良い作品。観ていると色々な感情が湧き出てくる。会社やジャンルこそ大きく異なるが『宇宙よりも遠い場所』に近い作品であり、私の中では『サクラクエスト』に並んでこの系譜で最も好きな作品の一つ。自信を持って全年齢にオススメしたい……が2話の次郎丸部分はちょっとアレ。

2011年の作品ということもあり、特に初期の回において人によっては受け付け難い部分もあるかもしれない。まず子どもをほっぽって夜逃げする母親はどうしようもなく、女将の接し方も管理職失格・労基法違反と捉えられかねないものであり、緒花の空気読めなさと民子のストレートすぎるコミュニケーションと菜子のもじもじにイライラする人もいるだろうし、菜子の両親の行為はヤングケアラーを生み出す一種の虐待であり教育者のくせして最低。現に私も最初に視聴した際は2話か3話で切ってしまった。しかし、そこで切ってしまうにはあまりにも勿体無い作品である。1〜2回で一つのエピソードになっており全ての回において内容が濃いので、全く飽きることがない。「お仕事シリーズ」の中でも特に主人公(となこち)の成長が顕著な作品。緒花真っ直ぐで諦めなくて行動力の化身で本当に良い子。ツンデレみんちと不器用なこちと能登さん(※巴姐さん)を推そう。んとうにっくりするほどロンがいに素晴らしい作品。ちなみに1話の「この時間帯だけは好き」以降は伏線です。2011年の作品なので、ガラケーだし在来線はくたか車内販売ありだし代々木の高速バス乗り場だし中野駅(せせらぎの発車メロディーもあり)は津田英治アナウンス。

OPとEDがとてつもなく良い。OPアニメーションは、もはや模範的とも言える構成かつPAの緻密な作画(特に1クール目水溜まり部分が推し)と勢いのある動き(サビが最高)で、名曲「ハナノイロ」と組み合わさる1クール目OPは全てのアニメOPの中で一番好きと言っても過言では無い。4話以降のOPアニメーションではある一人が加わっています。ED部分で使われる1話含め全ての回でOPが使われるのが最高で、かつ二話以降は最終話除き毎話必ずOPから始まる(『サクラクエスト』と同様)ため、一挙放送では次回放送→OPが連続するのも良い。そしてEDは特殊EDが多く、名曲ばかりだしアニメーションも良き。

石川県ゆかりの作品。登場人物の名字(四十万、鶴来、押水、和倉、輪島、富樫)は石川県の地名であり、舞台である「湯ノ鷺温泉」のモデルは湯涌温泉(金沢の奥座敷)及びのと鉄道西岸駅。のと鉄道及び西岸駅は能登半島地震により大きな被害を受けてしまっており、ひたすら復興を祈るばかり。湯涌温泉地震の煽りで観光客が減っているという情報もあり、足を運びたいところ。石川県、ぼんぼれ!私もぼんぼる!

 

87'. ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかII(2019夏)/ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅢ(2020秋)/ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ(2022夏・2023冬)

OP…A1、A6、A1、A14

ED…B2、A2、C3+B4、A24

次回予告…タイトルのみ

頭空っぽにして見られる度…☆☆

心えぐり度…☆☆☆

ダンまち。非転生系のラノベ異世界系ファンタジー、しかし特に3期以降はシリアス要素があまりにも強い(ので軽いノリで視聴すべきではない)。主人公ベル・クラネル、タイトルの通り本来「出会い」ゆえに成長を決心した人間なのだがあまりにも良い奴すぎる……が、年上の女キャラ(りりすけ除く)に翻弄される姿は完全な少年。というかメイン登場人物全員、設定上は今の私より下の年齢らしく「年齢の割に成長しすぎでは????」となる作品。CV早見沙織が強い(4期後半を観ればその裏が分かります)作品。4期21話の早見さんの恥じらい演技がとても良い作品。毎回毎回OPが良い。

 

93'. 宇崎ちゃんは遊びたい!ω(2022秋)

OP…A14

ED…B24’

次回予告…BGM+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度…☆☆☆☆

心えぐり度…☆☆

ウザい女子大生と友達の少ない(ように見える)男子大生のラブコメ。全キャラの中で宇崎母(CV早見沙織……)が最も異常だと思ってる。そして2期で活躍の宇崎父も勘違いハイテンション野郎でめちゃくちゃ面白い。最近は原作で桜井と宇崎がついに(自主規制)したことが話題となっていた。

 

189. カッコウの許嫁(2022春〜夏)

OP…A1+C4、B24+A3(SNS画面)

ED…B4、D4+B2+B4’

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆☆

取り違えられて育った男女が許嫁になってしまったラブコメ。設定に(あり得る話ではあるが)あまり現実味がないため、そこそこ重いが視聴していてダメージの少ない話。そういう意味でも「ニセコイ」みがある。OPを省略しない系アニメ。2期OPの映像は独特だがかなり好き。

 

190. 最近雇ったメイドが怪しい(2022夏)

OP…A1

ED…B4

次回予告…BGM+屋敷+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆☆

心えぐり度……☆☆

少年と怪しいメイドの話。ウザメイド(『うちのメイドがウザすぎる!』)とは違って別に異常者ではない。ただひたすらにおねショタが見られる作品。CV早見沙織という最高のショタキャラ。ドルオタの友人が推してるグループがOP曲を歌っている。

 

191. 【推しの子】(2023春)

OP…B24+C3’+B5

ED…B24

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆

話題作。推しであるアイドルの子どもに転生して色々とやる作品(と書くといかがわしそうだな……)。鬼滅に対して抱いた『なぜここまで話題作になったんだ?』という感想を最初こそ抱いたものの、視聴するうちにこりゃ話題になりますわという感想になった。光の裏にある人間の闇を鮮やかに描きすぎである。話題作ながら全年齢対象ではない作品だし、青年漫画の真骨頂ではなかろうか。転生系の新たな境地。OPとEDの映像の凝りがすごい……。

 

192. ポプテピピック(2018冬)

次回予告…(『星色ガールドロップ』の次回予告)

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆☆

心えぐり度……☆

どうあがいても、クソ。私にとっては大学受験直前期にやっていた思い出(は?)の作品である。

 

193. 色づく世界の明日から(2018秋)

OP…B2

ED…C2

次回予告…BGM+一枚絵+シーン重ね言葉+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆☆☆

未来の魔法使いが現代にやってきて、高校生時代の祖母らと過ごすうちに変わっていく青春物語。聖地は長崎市P.A.WORKSオリジナル作品の一角で、スタッフとED曲的には『凪のあすから』『白い砂のアクアトープ』の系譜(やはり舞台は海辺の街である)、色の使い方が良い作品。「不思議な女の子と有限の時間を過ごす」というテーマ、『あの夏で待ってる』の二番煎じみたいな感じじゃねえのか〜??(cf.『神様になった日』)と思ったがこの作品は女性側視点メインだし結末が割としっかりしている。「写真」が物語の一つのキーになるという性質、『Just Because!』みてえだな〜〜と思ったが「写真」の果たす役割が独特かつ意味あるものでハッとさせられる。人間関係ごちゃごちゃなのはこれらの作品と同様であり、「青春」の様子に心をやられつつも「後のこと考えて行動しろや」と若干腹立つ部分もあるけど、「その出会いがどういう意味を持ち、それを通して”お互い”がどう変わっていくのか」が鮮明で涙の出てくる作品。他のPA青春作品と比べ無名な気がする(Wikipediaが寂しい……)が、良作。なんならファンタジー青春作品の中では一番好きな作品と言っても過言ではない。OPも無名だろうが曲・映像共にかなり好き。

 

194. サマータイムレンダ(2022春〜夏)

OP…D4→C4→C2、A14

ED…D4、B4

次回予告…BGM+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆☆

和歌山県の離島・日都ヶ島で起こる怪奇現象に、主人公がタイムリープを繰り返しながら立ち向かっていく物語。猟奇的殺人を起こす怪異に対して推理とタイムリープで戦う、『ひぐらし』みのある作品。さらに「夏、海、田舎、日焼けした少女」の組み合わせがあることにより日本人の心に刺さる?作品。1期OPは特徴的だが2期OPはかなりオーソドックスかつ完成度高い。聖地は和歌山市友ヶ島無人島)。

 

195. その着せ替え人形は恋をする(2022冬)

OP…A14

ED…B4’

次回予告…「次回」+タイトル表示+BGM

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆☆

『そのビスク・ドールはこいをする』人形師を目指す生真面目な男子高校生が、クラスメートのギャルの「着せ替え」(コスプレ)を行い交流していく作品。いわゆる王道ラブコメに近く、誰かが指摘していたが「控えめな少年」と「オタクに理解のあるギャル」のラブコメということで超絶男性受けするような作品である。

 

196. 竜とそばかすの姫(2021/7)

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆

細田作品。歌えなくなっていた女子高生が「U」の中で歌う物語。細田作品の中でもストーリーが単調ながら終わり方がよく分からない、かつ特に棒読み感が強く、私的には正直あまり……な作品だった。市井のレビューを当てにするわけではないがレビューも軒並み悪く、やはりか……というところ。舞台は高知県

 

197. 僕だけがいない街(2016冬)

OP…A14

ED…C4

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆☆☆

僕街。少し前の未来に戻れるが自らの意思と無関係に発動する「再上映(リバイバル)」という能力を持つ青年が、その能力により小学生時代に戻ることとなり、誘拐殺人された同級生少女を救う物語。数ある「過去に戻って人を救うタイムリープ作品」の一角であるが、タイムリープものの中でも特にサスペンス色が強く(かつ『ひぐらし』『サマータイムレンダ』ほどあからさまに猟奇的でもなく)、人を救う理由が恋愛や家族愛というちっぽけなものに帰結するものでなく(かつ『リゼロ』ほどの重々しさもなく)、私の好きなタイプの作品。原作を5年前に読破したが内容を忘れてしまったので、新鮮な状態でアニメも視聴できた。聖地は苫小牧。

 

198. SSSS. DYNAZENON(2021春)

OP…A24

ED…B2

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆☆

令和のロボットアニメ。『SSSS.GRIDMAN』(こちらは平成末期)に次ぐ第二弾。メインは合体ロボットであり、異なる背景と様々な葛藤を持つメインキャラクターらが結託する姿を描いた物語。『SSSS.GRIDMAN』ほど「僕らの世界が何者かに侵略されてる」感じは無い(……と思っていたら○話で突然不穏になったが)が各キャラの描き方が丁寧で、アクション系が好きではない私でもかなり好きな部類の作品。

 

199. 私の百合はお仕事です!(2023春)

OP…C3+B24

ED…B4

次回予告…タイトル+BGM

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆☆

わたゆり。カフェの仕事として百合をする……だけではない物語。1話視聴時は「この作品って本当に百合なん?」と思ったがちゃんと重くなる。やはり原作が百合姫連載作品、『ゆるゆり』みたいな日常系を求めて視聴するなら覚悟したほうが良い。……ただし百合作品としてはかなりライトな部類なのだろう(原作はもっとドロドロらしいが)。OPの始まりが『ゆるキャン△2』のそれに近い。

 

200. 葬送のフリーレン(2023秋〜2024冬)

OP…A24

ED…B4

次回予告…セリフ重ね+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆☆

話題作。かつて勇者一行として世界を守った長命種エルフが、仲間の死後に「人間を知るため」旅をする物語。リアタイの体力を失くした私が今クール唯一ちゃんと視聴した作品。視聴の仕方が話題になっている通り、「キャラの消費」という観点で頭空っぽにして視聴できる令和っぽい作品でありつつ、平成より流行した冒険譚の「その後」を描くというストーリーも令和っぽく、原作公式のX(旧Twitter)アカウントのポストの仕方も令和だし、『【推しの子】』同様にOP曲が「一般曲の流行アーティストによる曲」なのも令和。異常者の私も「人間を知るため」に旅をした方が良いかもしれない……。

 

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おまけ。

 

イチオシアニソン

一般的に有名でなさそうな歌をここでは挙げる。個人的にはメロディー以上に歌詞の良い歌が推し。……とか言ってたらちょっと前の歌ばかりになってしまった。有名どころでも『God knows...』『only my railgun』『君の知らない物語』『コネクト』『花の塔』と『晴る』は大好きです。あと、『日常』のBGM(これをサンプリングしたのが猫ミームにも使われてる『My Ordinary Life』)ね。

ハナノイロnano.RIPE、69. 花咲くいろは(2011春)③⑥/前期OPテーマ)

 「涙の雨が頬をたたくたびに美しく」アニメ放送当時はニコニコで「ズコー」と馬鹿にされたようだが大好きな歌である。「バイバイ あの愛しき日々は 戻りはしないから」アニメ本編の流れとOP映像のこの部分を踏まえると「強い決意」を読み取れる。そして「開いてゆく小さく閉じたココロが夜の隅で静かに 色づいてく もっと深く優しく」まさしく成長していく様子である。『花いろ』は特殊EDも多いが特殊EDの時のEDテーマ含め全ての歌が推せる。

Girlish Lover(自らを演出する乙女の会、66. 俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる(2013冬)③/OPテーマ)

 「いっせーの! おかえり さあ出かけよう 抜け駆けランデブー 絆が大事 恋人が大事」空耳が酷すぎるアニソン。裏腹ゴリラ。他の曲とは違う意味での「名曲」ということで挙げさせていただいた。

らしさSUPER BEAVER、110. ばらかもん(2014夏)④/OPテーマ)

 「自分らしさってなんだ?」アニソンっぽくないけど全アニソンの中で一番歌詞が好きな歌かもしれない。「僕は君じゃないし君も僕じゃないからすれ違う手を繋ぐそこには愛だって生まれるそういうもんさ」「変えられない大切があるから変わりゆく生活が正しい」真面目に歌詞に向き合うと歌詞だけで泣けそうな歌。自分らしさに悩む全ての人に届け。

Cocoiro Rainbow(78. ヤマノススメ セカンドシーズン(2014秋)③/後期EDテーマ)

 「晴れた日も 雨の日も しあわせだったら 天気予報はいらないね」かけがえのない友情を描いたよくある歌だが、セカンドシーズン後期の内容ゆえか、なぜか私にとっては涙腺を崩壊させる歌であった。普通に尊い歌。

しあわせグラフィティ(リョウときりん、125. 幸腹グラフィティ(2015冬)④/次回予告のテーマ)

 「たべる つくる つくる たべる たべる つくる ふたり ドゥビドゥバ」次回予告のテーマとかいう他に見ない存在にしてとてつもない中毒性を誇る。フルバージョンは「人波におされて」から始まるガチ名曲。

春擬きやなぎなぎ、8. やはり俺の青春ラブコメは間違っている。続(2015春)①/OPテーマ)

 「探しに行くんだ そこへ」上記の『らしさ』除くと一番歌詞が好きなアニソン。「こんなレプリカはいらない 本物と呼べるものだけでいい」「見えないものはどうしても 記憶から薄れてしまうんだ」サビの歌詞だけで破壊力がすごいし、最後が「『ありがとう小さな芽 見つけてくれたこと。』 君はつぶやいた」なのも俺ガイルにピッタリの歌。ラブコメのアニソンにして簡単にラブやコメディを歌わない。やなぎなぎの主題歌は名曲揃い(ユキトキ、芽ぐみの雨、over and overhere and thereなど)だがやはりこれがダントツだろう。

Morning Glory(K)NoW_NAME、149. サクラクエスト(2017春)⑤/前期OPテーマ)

 「鏡の中眠たそうな目、擦って そっぽ向いた前髪におはよう まぶしい朝…良い天気 きっとね」ゆるーく挑戦していくような歌。「夢見てる場合じゃないなんて誰が決めたんだ ネガティブはゴミ箱に捨ててゆこう」非常に元気の出る歌詞。アニメ含めどマイナーなため、曲名で検索しても別の曲しか出てこないくらいだが、隠れた名曲である。

涙はみせないこみっくがーるず、74. こみっくがーるず(2018春)③/EDテーマ)

 「—感じていた、おんなじ香り」上記『ハナノイロ』同様、最後に最初と同じフレーズで締められる歌。「つかれた時は振り返らないで 想像して想像して 次の一歩の事 大丈夫だよね きっと一人じゃない」きらら作品のEDでアニソン色しかない歌だが、もはや「疲れた社会人に響く歌」でもある。

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以上!

[雑41]無くなるものに想いを馳せて

モノの消滅に感じる寂しさ。鉄道の話だけでなく。

 

 

 

大きなダイヤ改正に触れて


本日2024年3月15日、鉄道好きにとっては様々な「最後」が訪れる日であった。翌日2024年3月16日のダイヤ改正を控え、ダイヤ改正により消滅する

JR東日本新幹線E2系併結運用/J66編成・J69編成

JR東日本京葉線通勤快速及び外房線東浪見以遠直通列車(特急除く)

JR西日本北陸本線金沢〜敦賀間及び同区間を走る特急

といったものが最後の運行を迎えることとなった。


うち、E2系併結運用終了と北陸本線敦賀以北廃止(経営分離)は、代わりにE5系+E8系運用開始と北陸新幹線金沢〜敦賀間開業という、これまでより良くなる「アップグレード」がなされるものである。そのため私としては、当然歓迎するものと考えていた。

……しかし、頭ではそう理解していても、どうしても、寂しさが襲いかかってくる。

 

 

 

フラットな不可逆性と、カリスマの不可逆性


別に今回のダイヤ改正で無くなる諸々の存在は、私のこれまでの生活に密接に関係してきたわけではない。そして私は、ラストランにわざわざ駆けつけるほどのオタクでもない。

……それなのに、なぜ寂しいのか。

考えてみると、上に書いた3つは、それぞれ少しだけ違っていた。


E2系の併結運用/J66編成・J69編成運用終了、これは私にとってさほど寂しいものではなかった。私は鉄道好きではあるが車両に関しては割と無頓着であり、一部(後述のE4系等)の例外を除けば、生活に密接に関係してきた武蔵野線205系や山手線E231系だろうがその運用終了や引退をあまり惜しまなかったものである。E2系完全引退の時が来たとしても多分同じ感じだと思う。E2系J69編成も2月2日の旅行(いずれ記事を書く予定)や3月2日の旅行(いずれ記事を書く予定)で遭遇したが、「お、ラッキー」程度にしか感じなかったものである。

しかしそうであっても、「その存在と一緒に過ごせる可能性がゼロになる」「その存在を二度と目にできなくなる」という意味で、あるものが不可逆的に消えるというのは普通に寂しいものである。私は繊細なもので、部屋の模様替えや道路の付け替え、果てはゴミ捨ての際にも同じような寂しさに襲われることがある。


一方で京葉線通勤快速の廃止、これは寂しさが比較的強いものであった。その追加の寂しさは、「カリスマの引退」的要素によるものであろう。

京葉線通勤快速、それはTDR玄関口の舞浜駅や大都会海浜幕張駅を通過し、新木場〜蘇我間をノンストップで走行する異常な列車である。内房線浜野〜巌根間(木更津以遠だとアクアライン経由高速バスの方が便利なので……)や外房線鎌取以遠から東京に通勤する人々にとって便利な列車でありながら、TDRに向かおうとして誤って乗車して絶望、というネタにも使われた列車でもあった。

そういった突飛な存在が消えてしまうというのは、いわゆる「普通」の存在が消えるのよりも不可逆性の影響が大きく、より強い寂しさを感じさせるものではなかろうか。いわば、大スターの引退が普通の選手の引退よりも騒がれるようなものである。そういう意味で、「カリスマの引退」という言葉を使っておこう。私はその引退前の勇姿をこの目で捉えておくべく、仕事を早上がりした日の夕方に東京駅から乗り込み、勝浦駅まで乗り通してみたものである。

他に私の場合、八ッ場ダム建設に伴うJR吾妻線新線付け替えによる樽沢トンネル(日本一短い鉄道トンネル)廃止、新幹線E4系E1系引退に伴い唯一となった二階建て新幹線)引退、東海道新幹線自由席車内販売(シンカンセンスゴイカタイアイスを販売)廃止、三宮駅の地下道連絡口A14(俗称「ガリバートンネル」、戦前から存在)閉鎖といった際に、「カリスマの引退」としてより強い寂しさを感じたものである。日本一短い定期航空便である琉球エアーコミューター北大東→南大東の便も、同じ理由で寂しさを感じるので乗りに行くこととした。

 

 

 

思い出が、決して経験できないものになる


今回のダイヤ改正で私が最も寂しさを感じたもの、それは間違いなく

北陸本線金沢〜敦賀間及び同区間を走る特急サンダーバードの廃止

である。

「特急街道」という往時の北陸本線の性質、サンダーバード37号の「日本最速の在来線特急」いう肩書き、そういったものゆえの「カリスマの引退」的要素も小さくない。しかしそれ以上に、

たくさんの思い出を載せて走ってきた

という事実が私を寂しい気持ちに押しやるのである。


私はまさしく「カリスマの引退」の要素ゆえに、先日サンダーバード9号(37号同様に敦賀駅を通過し京都〜福井間をノンストップで走行)の乗り納めに行ってきた。

そして辿り着いた金沢駅。そこには、新幹線延伸開業の広告の下に「ありがとう北陸本線!」という言葉と共に、さまざまな人々の想いが書き込まれたメッセージボードがあった。旅行者や鉄道ファンの書き込みも多かったが、通学や通勤で長らく使用した地元の方、帰省で使った方、サンダーバードに憧れて今の仕事に就かれたという方、そういった方々の愛のこもったメッセージが数多く見られたものである。

旅行者や鉄道ファンも含め、多くの人々の思い出の一端となり、そして多くの人々に愛された路線や特急であったこと、それを強く感じられるシーンであった。


そして私自身も、思い出の一端に北陸本線及び特急サンダーバードがあり、それを強く愛していた一人であった。

大学1年の時の大旅行で、本州の都道府県庁所在地で唯一未踏であった金沢に、北陸本線普通列車で降り立った。大学3年の時、コロナ禍のGoToトラベルであわら温泉に宿泊する際、立山黒部アルペンルート→富山金沢間の高速バスで金沢に辿り着いた後、北陸本線普通列車芦原温泉駅に向かった。同じ年、「どこでもドアきっぷ」を使い北陸廻りで関西に行った際、往復サンダーバードを使い、その速さに興奮を覚えた。同時に発車メロディー好きの私は、金沢駅をはじめ主要駅で使用されている到着メロディーに感動を覚え、また主要駅(芦原温泉駅等)の発車メロディーをひどく気に入った。大学4年の時、今度は復路のみだが、「どこでもきっぷ」を使った西日本旅行サンダーバードを使った。2022年2月、最長片道切符の旅で、今度は普通列車で金沢→敦賀を乗り通した。翌年、能登旅行の帰りにあわら市の廃止予定バスを見送るべく、サンダーバードで金沢→加賀温泉を移動した。そして最後、サンダーバード9号でそのカリスマ性を味わった。

……そんな思い出の詰まった存在、それが北陸本線と特急だった。


そもそも時間の経過というものは不可逆で、だからこそモノの変化というのは(ゴミ捨てであろうが)フラットに寂しさを感じるもの。それにプラスで、そのモノに思い出が詰まっていると、その思い出の再現が不可能になってしまう、下手したらそのモノを忘れてしまうことで思い出も忘れてしまうかもしれない、そんな寂しさがぶわっと襲いかかってくるのだ。

サンダーバード9号に乗ったその日、私は宇奈月温泉のとあるホテルに宿泊した。そのホテルは2年前、大学卒業に際して高校の友人と宿泊した場所であった。訪問して懐かしさを感じると共に、一点違和感が。それは、当時私が土産を買った場所であった、ホテルの売店が無くなったことであった。ただそれだけなのに、自分の思い出の一端が崩れてしまったような気がして、不思議な切なさを感じたものである。さらに「もしかして経営が厳しかったり……?」と不要な邪推をしてしまい、この場所そのものが消えてしまうことへの恐れまでも感じてしまった。

より広く、「卒業」というものの持つ寂しさもこれであろう。まさに新幹線開業に伴う在来線廃止と同じく、それ自体は「アップグレード」なのだが、思い出の半永久的な喪失に切なさを覚えるもの。


そして、たとえ自分の思い出でなく他人の思い出であっても、それに触れると共感してしまって、その喪失が惜しいものと感じられるものだ。

2015年の北陸新幹線金沢開業、この際は在来線特急としての「はくたか」(越後湯沢〜ほくほく線経由〜金沢)が消滅した。当時にあっては、中学生の私ははくたかを使用したことがなく、特に寂しさを感じはしなかった。しかし廃止から時間が経ってから、大学生や社会人になって越後湯沢駅ほくほく線を使った際にはくたか用の広大な空間やほくほく線の高規格を目にしたり、当時のラストランのアナウンスを聞いたりそういったことをする中、多くの人々の思い出を紡いできた列車ということを再確認し、私は寂しさを感じるようになっていた。

鉄道以外でも、[雑15]で書いたとしまえんや東急百貨店東横店など、まさにこの最たる例である。

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としまえんは明らかな「非日常」の空間であり、さまざまな人のさまざまな特別な思い出が形成されてきたことは想像に難くなく、初訪問にして閉園に強い寂しさを感じた。東横店閉店の様子を眺めている時は、隣にいた方が元従業員ということでさまざまな思い出があることに触れ、自分までもが寂しい気分となってしまった。

 

 

 

寂しさと向き合いつつ、前へ


「アップグレード」というのは基本的には良いことだ(北陸新幹線の場合は関西方面との往来に敦賀乗り換えが必須になるという弊害があるが……)。それが無くては環境は良くならない。モノが無くなることへのフラットな寂しさがあっても、モノが無くなること自体は決して悪いことでないので、ある意味仕方のないものだ。

その寂しさは思い出の存在によりブーストされるから、思い出が無ければもっと楽かもしれない……。しかし思い出の存在が悪ということはなく、むしろ思い出があるからこそその存在に愛着が湧くものである。思い出の存在による強い寂しさも、向き合わなくてはならない存在だ。


明日2024年3月15日、北陸新幹線金沢〜敦賀間が開業し、世界がまたアップグレードされる。無くなることの寂しさを感じつつも、アップグレードされる世界に向き合い、それを愛し続けて。

[憂27]2023年を振り返って

自らの変わらぬ欲求と、着々と積み上がっていく年齢の狭間で。

 

 

2023年が終わる。

昨年2022年の暮れ、私は2022年のことを「人生で最も濃い一年の一つであっただろう」と評した。一方で今年2023年はどうか。社会人2年目を迎えた私であったが、「2022年に実施していたことを淡々と続ける」ばかりの、あまり面白味のない年であったかもしれない。しかし一方で、「淡々と続ける」だけであることに若干の焦りを覚える、そんな年でもあったかもしれない。

年の瀬に、2023年の自分を振り返って、今抱いている危機感をはっきりとさせておきたい。

 

 

 

自由への憧憬は、捨てられず

 

ちょうど一年前、私は下記のような記述をしている。

社会人になって私が思ったのは、私は「自由」をかなり愛していたということである。学生の間はかなりフラフラしており、そこに深い楽しみを覚えていたのが私であったのだ。それに対して社会人となると当然の如く「責任」がまとわりついてきて、迂闊な行動を取ることができない。

しかしながら当然であろうが、人間が成長するには「責任」を取るため適切な行動を取れるようになることが大事である。

 

9ヶ月が経ってなお、私は一人前の社会人とは口が裂けても言えないような状態だが、そろそろしっかりと「自由」への憧憬を捨て、「責任」を背負う覚悟を決めねばならないのかもしれない。

では果たして一年後、私という人間は「自由」への憧憬を捨てられたのかというと、決してそんなことはなかった。

趣味最優先なので趣味の時間が欲しく、休暇を希求する。気楽な一人行動を愛するが故に、伴侶を求めない。

 

 

 

仕事第一のマインドにできない

 

1年9ヶ月の社会人生活を経て改めて、私の生活の中心は仕事ではなく趣味である、ということを強く自覚してしまった。

 

大学時代の私にとって労働とは、「生活の中枢となる存在を実行するためにやらねばならないもの」「目標達成のための手段」という認識であった([論31]参照)。自由を奪われる労働という行為は基本的には忌避し、フルタイムに近いインターンなど「貴重な学生生活をそんなことに使うのか?」と絶対にやらない心づもりでいた。一方で、労働が生活の大半を占める社会人になれば、労働というのはそれ自体が自然と「生活の中枢」「目標そのもの」になっていくのではないか、と私は楽観視していた。

……しかし実際は、そうとも限らなかった。残念な社会人が出来上がってしまった。

活動可能時間のうち多くを取られるため「生活の中枢」になったのは間違いないが、「第一優先とするもの」かと言われればそうではない。私の頭の中は常に「次はどこの路線バスに乗りに行こうか」であり、常に有給休暇の取得計画を立てているものである。

そして「目標そのもの」になんかなりやしなかった。目標はやはり「国内全鉄道路線完乗」「路線バスと船のみで東京駅と全国を繋ぐ」であり、仕事で何らかの功績を上げることは二の次となっていた。

 

今私がいる業界及び区分というのは、いわば責任に対して賃金が割に合わない。崇高な精神のもとで自己犠牲的に労働しようとする人々によって支えられていると言っても過言ではない。

しかし私は、あまり深く考えずに「興味のある分野だから」ということでこの世界に飛び込んできた。いわば、他の人々と比べてやる気が圧倒的に足りない状態で入ってきた。今でこそ落ち着いてきたが、春頃には「何でこんなところ来ちゃったんだろう」と本気で悩むことが何日もあったものである。

「ワーク・ライフ・バランス」という言葉に腹が立つことがあった。なぜ労働が当然の如く第一優先になっているのだ、と。働かなくて済むなら働くわけないじゃないか、と。でも実際は労働に身を捧げる人がいて、むしろそういう人の方が多いとも言えるかもしれない。仕事が二の次になる私の方がおかしいのかもしれない。

 

なぜ仕事をするのか?上記のように自己犠牲的精神が欠如しかつ独身である私にとって、その答えはもはや「稼ぎを趣味に使うため」と「ニート期間があることで再就職できなくなる等の事態が起こらぬよう、将来の選択肢を狭めないため」でしかなくなっていた。ちなみに労働のその他の効能として「頭を使わないと頭の機能が鈍って早く老化するし、日常に彩りが無くなる」という人もいるが、私レベルになるとそれは趣味で十分補える。

 

趣味を持っていることは、人生の豊かさや職場以外でのセーフティネットの構築といった点で、しばしば肯定的に捉えられる。しかし同時に、仕事に集中できないことがあるということをも意味する。特に私のように時間のかかる趣味があれば、趣味優先の生活になった場合どうしても仕事の側が疎かになり過ぎてしまう。

趣味というものとうまく付き合わないと、私のように仕事第一のマインドにできない、社会不適合者が出来上がってしまう。

 

 

 

拗らせた挙句、パートナーを欲していない

 

学生時代、私はかなり拗らせた人間であった。このブログの「拗らせ」カテゴリーなんかかなり酷いものである。

ところが社会人になり、拗らせることは著しく少なくなった。もはやどうでも良くなると同時に、そもそも私が一人行動を好む故にパートナーの存在は「邪魔」であると完全に思い込んでしまったのである。

 

視聴頻度は下がったが、私は今でもアニメ好きである。青春模様を描いた作品はよく観るものである。

しかしそこで受けるダメージというのが「こんな青春を送れれば……」とかそういうのでは全くなく、「もう自分って高校卒業してから6年経つんだな……」みたいな方向に完全シフトしているのである。まあ恋愛関係にある男女を羨ましいと思わないことはないが、「でもそのせいで自分の人生振り回されるの嫌じゃね?自分が学生時代そうじゃなくて良かったー」とか本気で思ってしまう大変に残念な人間になっているのである。

 

飲み会の場でそういう話になった時、提供できる話が一切ない。そしてそれが平気になっている。

今こそ一人で動ける体力があるから良いが、老後を一人で過ごすのは厳しいと思っているので結婚願望はある。それなのに、今すぐに行動することで自分の時間を犠牲にするほどじゃないと勝手に思い込み、何も行動しない。

いよいよ、本当にどうしようもない人間になってきている。

 

こういうふうに、私は社会人になっても内面全然成長していない。それどころか、「悪化している」という見方すらできてしまう。

 

 

 

一方、人生は進んでいく

 

当たり前だが、年齢は積み重なっていく。私のいる世界だと年功序列だから当然責任はついてくるし、周囲で結婚する又は結婚秒読みという人も増えてきた。

そう考えると、私はこのまま自由を愛し続ける成長しない人間で良いのだろうか、と思うようになってきた。

 

趣味を愛すること自体は悪くない。しかしもう少し仕事にウエイト置かないと破綻する。

一人の時間は素晴らしい。しかし危機感を持って何らかの行動をしないと、老後を孤独に過ごす独身男性の出来上がり。

 

一年経って全く変わらなかったのだから、私のマインドを変えるというのはなかなか難しいと思う。

でも、2024年こそは何らかのアクション起こさないともっとどうしようもない人間になっちゃうよな、とも思う。

 

欲求に忠実にいるだけでなく、しっかりと将来のことを考えて行動できる人間に、2024年はなりたい。大したことない目標みたいだが、私にとっては大した目標なのである。

 

 

2023年の最後に。

結局あまりブログも書けなかった一年でしたが、来年こそは[論]カテゴリーの真面目な内容を綴るのも、[雑]カテゴリーで路線バス乗り継ぎなど趣味を語るのもいろいろやりたいと思います。

2024年もよろしくお願いします。

[雑40]路線バスと船だけで、東京駅から全国各地を目指そう!

最長片道切符の旅よりずっと壮大な計画の、はじまり。

 

 

目についたのは、路線バスでした

 

2022年3月17日、私は最長片道切符の旅を完遂した。先立つ3月15日には47都道府県への宿泊、そして少し過ぎた3月24日にはJR全鉄道路線(当時)の完乗を果たした。

大学卒業を目前に、大きな目標を達成した私がそこにいた。

 

それから4ヶ月が経った2022年7月。社会人になった私は、安定した収入を得るとともに、週休二日制の恩恵により学生時代より遥かに休日の確保された生活をしていた。職場の環境が良く、休日にアクティブに活動する体力も残されていた。

しかし、「47都道府県への宿泊」「JR全鉄道路線完乗」という大きな目標を失い、「学生時代のうちに」という期間目標も消滅した私は、半ば燃え尽き症候群のような状態にあった。休日も金も体力もあるのに、「今度はここに行きたい」という思いが湧いてこなかった。次なる目標が消えていたわけではないが、「国内全鉄道路線完乗」「現存十二天守全訪問」は今すぐに取り組む必要性が薄く、「国内全市町村到達」はどこから手をつければ良いか分からなかった。

 

一方で私の体は正直であった。「今度はここに行きたい」という思いは湧いてこなかったが、「どこかに行きたい」という思いは常に存在した。

そこに、私の両親のおでかけ好きが重なった。両親は関東近郊に車で日帰りで出かけるもので、私はそれについて行くことにした。ただし私は一人旅が好きなものだから、途中で降ろしてもらってそこからは一人で行動する、というスタイルを選んだ。

両親はある時は羽生駅で、ある時は本庄のスーパービバホームで私を降ろした。しかし羽生駅だと東武秩父鉄道も乗ったことあるし、本庄のスーパービバホームだと本庄駅からも少し離れている。

 

そこで目についたのが、路線バスであった。

 

 

 

路線バスで、地点と地点を結んでみましょう

 

それまでの私も、路線バスへの興味が無かったわけではなかった。20歳の代まで安くなるキャンペーンで行った小豆島と伊豆大島、47都道府県制覇のために訪れた奄美大島沖縄本島、これら離島は鉄道が無い又は乏しいため路線バスでの移動をやむなくされた。首都圏でも、交通費をケチるために都営バスや西武バスの一日乗車券を使って路線バスを乗り継いでいく、という妙な行動をとったことがあった。その他にも、鉄道での旅をする中で沿線以外の地域に行くため、(竜飛岬、室戸、各種温泉地など)路線バスを使ったことは多々あった。

しかし路線バスというものは、「JR全鉄道路線完乗」という目標に貢献することがなく、かつ鉄道と比べて距離あたり著しく高額となる。そのため、制約ある学生時代には積極的に手をつけていなかったのである。

 

羽生駅で降ろされた時、私は夕方に東京での用事を控えていた。そこで思いついたのが「東京まで路線バスだけで行ってみるか」というのであった。しかし羽生駅からの路線バスは東京方と繋がっていなかったため、ひとまず東武動物公園までは鉄道で行き、そこから路線バスを乗り継いで行くことにした。

本庄のスーパービバホームで降ろされた時、路線バスですぐに向かえるのは群馬県伊勢崎市であった。そこで「別の都道府県まで路線バスで行ってみるのも良いな」という思いが芽生えた。実際にその時は、路線バスで伊勢崎との間を往復したものである。

 

……私はいつしか、路線バスで二地点を結ぶことに魅力を感じるようになっていた。

 

まず、二地点を結ぶルートを組むことで、「今度はここに行きたい」という思いを強制的に作り出し、「既知の場所の追認」(※前記事参照)という私の趣味を推し進めてくれる。これ自体は、「国内全鉄道路線完乗」「現存十二天守全訪問」「国内全市町村到達」といった既存の目標と同様である。

一方で路線バスならではの特徴の一つとして、いつ無くなってもおかしくないというのがある。運転士不足が叫ばれ、都市部でもバス路線の廃止や縮減が進む昨今、路線バス乗り継ぎという行為は難易度を上げつつある。今すぐに取り組まないと不可能になるかもしれない、これが私を動かす原動力となった。

そして路線バスというものは、鉄道・航空機・高速バスと異なり、都市間交通として用いられることが少なく、時間がかかるし本数も確保されていない。だからこそ、いつ廃止されるか分からないスリルと相まって、難易度が著しく高くやりがいがある行為なのである。

 

 

 

 

せっかくなら、他の人がやらないようなスタイルで

 

路線バス乗り継ぎというのは、鉄道旅と比べて著しくマイナーだが、それでもある程度の挑戦者がいる。テレビ東京では何年も番組をやっているし、私の好きな某YouTuberは稚内駅から枕崎駅まで27日かけて移動しているし、意外にも路線バス乗り継ぎをテーマとした書籍もある。

……じゃあせっかくやるなら、他の人がやらないスタイルでやろうじゃないか。

 

テレビ東京の番組はじめ、挑戦者の基本のスタイルは「スマホ等での調査は禁止、徒歩やタクシー(予算の制約あり)を併用して繋ぐ」である。

私は逆に、「タクシーは許容せず徒歩は最小限として、最適なルートを事前に計画してなぞる」というスタイルにした。

 

某YouTuberは、路線バスにより「日本縦断」を行った。

私はそうでなく、「東京駅から全国各地を繋ぐ」という進め方にすることとした。しかし時間があまりにもかかるため、社会人の私が一度で済ませるのは基本不可能であり、ルート上で適宜中断・再開を挟み何回かに分けて実行する形とした。

 

「都市間交通として用いられることが少なく、時間がかかるし本数も確保されていない」という点では内航旅客船も似ている。そもそも、全国を目指すと言ったって、北海道と沖縄は路線バスと徒歩だけでは渡れない(九州は徒歩で行け、四国も行けないことはない)。

そこで私は、路線バスをメインとしつつ、船も使って繋いでみることにした。

 

ただし、高速道路を経由するバスを許容しないというのは、一般的なスタイルと同じである。これを許容してしまうと、難易度が格段に下がってしまうので。

 

……ということで、

「路線バスと船だけで、東京駅から全国各地を目指す旅」

始まります。

 

 

 

記録していきます

 

「全国各地」と言いつつ、具体的には原則46道府県の代表駅を目指すこととした。加えて余裕がある場合、

政令指定都市の中心駅(川崎、相模原、浜松、堺東、小倉)

・県下人口一位の市の中心駅(郡山、高崎、近鉄四日市、下関)

・面積の広い道県における特定地方の中心駅(旭川、函館、苫小牧、帯広、釧路、北見、小樽、弘前、八戸、いわき、高岡、松本、姫路、米子)

をも目指す。

 

この計画の記録は、最長片道切符の旅の記録と違い

①目的地(一記事あたり2箇所目安)へのルート紹介

②①に絡むトピック(ルート選定基準、醍醐味等)

③①のルートの実際の遂行記録

を一つの記事で記す形とする。記事のカテゴリーも「雑」「旅」の抱き合わせとする。

 

……それでは、次の記事での前橋駅高崎駅へのルート紹介から、始めていきましょう。

[雑39]旅をするわけについて、考えてみる(2023.12.3)

実は向き合っていなかった問に、向き合ってみた。

 

 

なぜ、旅をするのか?

 

小さな頃から日本の地図と路線図を眺めることが好きで、行ったことのない地への思いをずっと馳せていた。大学受験終了以降、それまで難しかった遠出を繰り返し、行ったことのない地を徐々に減らしていった。大学卒業を前にして、「最長片道切符」を使った長大な旅を敢行し、47都道府県への宿泊とJR全路線(当時)完乗を果たした。社会人になった今もなお、週末を中心に遠出を繰り返している。

趣味は何かと問われたら、国内旅であると明言できるくらいには、旅をしている。

 

……そう自覚している私であるが、「なぜ、旅をするのか?」という問いに対しては、あまり真剣に向き合ったことがなかったものである。

 

最長片道切符の旅を実行した理由、それ単体はかなり明確である。もともとのきっかけは[雑22]の記事の通り、「今しかできないことを成し遂げたい」であった。それに追加して、当時中途であった「47都道府県への宿泊」「JR全路線完乗」を遂行したいとの意欲が加わり、一般にとんでもないと思われるような行程を計画・実行したものである。

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しかしながら、数ある「今しかできないこと」の中から、国内での長旅という対象を選んだのは、なぜだろうか。そもそも大学受験終了後に遠出を繰り返すようになり、ゴールとして「47都道府県への宿泊」「JR全路線完乗」を真剣に目指していたのは、なぜだろうか。そのゴールが達成された後もなお旅を続けているのは、なぜだろうか。

 

 

地図・路線図の閲覧を重層的に楽しむ

 

「小さな頃から日本の地図と路線図を眺めることが好きで、行ったことのない地への思いをずっと馳せていた」が影響しているのは、間違いない。

 

「小さな頃」というのも、親によれば物心つく前からそうだったみたいなので、この地図・路線図への関心の根源を厳密に探るのは容易でない。とはいえ、幼稚園の時点で早々に関心対象から離脱した「自動車のエンブレムや車種」「サラ金のマーク」(←なぜ?)などと違い、「地図・路線図」というのはこの年齢まで未だ好んで閲覧する存在である。

地図・路線図の何が良かったのか、考えると

①未知の領域の存在を、手軽に知らせてくれる

②居住地や最寄り駅といった既知の領域も記載されているため、既知の領域の延長に未知の領域があることを感じ、ワクワクできる

③そしてその未知の領域を、現地訪問によって実際に確認するという形で、単なる情報収集にとどまらない重層的な楽しみ方ができる

といったところか。①は幼児の関心対象全般に言えそうだが、②は地図という媒体ならではの特徴の一つであろう(サラ金で②が生じてたまるか)。そして親がアウトドア派だったため、③が幼い頃からたびたび生じていたのも、関心の継続に大きく影響していそうだ(対照的に自動車のエンブレムや車種については、親の車の買い替え頻度の関係もあり③は生じづらかった)。

4年前に[雑6]で以下のように記しているが、これは結局幼い頃から本日までずっとそうなのである。

路線図や地図は、眺めているとそれだけで世界が広がるような感覚を得られる。路線図をたどっていくことで脳内で旅行をしたり、地図の細かい部分に目を向けてみて街並みを想像してみたり、知っている都市同士の位置関係・アクセスを把握したり。そうだ、別に「〇〇から××に行くために見る」という目的がなくても、眺めているだけで楽しいのだ。

また、その上で実際に現地に行ったり鉄道に乗車したりすると、脳内イメージの再確認につながる。これが結構快感たり得るのではないだろうか?

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①②は現物地図とインターネットさえあれば容易に生じさせられるため、関心のある地域はどんどん増えていく。一方で③については、資金・時間のない高校生までは基本的に近場or家族旅行or学校行事に絞られ、たびたび生じるといっても限度がある。

だからこそ、大学受験が終わり時間に余裕ができた途端、自発的に③を達成すべく遠出をするようになった。そしてそれとは別に①②は生じ続けるため、それに応じて③のための遠出も繰り返されていく。

 

ちなみに、現代ツーリズムの本質は「既知の場所の追認」であるという考え方([雑30]でも少し触れている)があるが、③の楽しみ方はまさにそれであろう。地図・路線図の閲覧によって得られた地域・施設・交通網の情報を確認するために現地に赴く、その「既知の場所の追認」に楽しみを見出すのである。

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かくして、地図・路線図ならではの魅力に取り憑かれた私は、それにより得られた情報の確認として、遠出を繰り返すようになった。

 

 

制約の中、一定の目標を達成しようとする

 

遠出を繰り返すようになったといえ、大学生の私は大量の資金を有しているわけではなく、かつ資金調達のためのバイト等により時間的制約も存在した。無秩序に遠出をしたいところであったが、必然的に、それらの制約の中での実施に限られた。

そこで私は、大学時代に達成可能と思われる一定の目標を設定し、その達成に向けて遠出計画を組んでいくこととした。

 

さて、一口に「地図」「路線図」といっても様々な種類があるが、私が幼い頃から慣れ親しんでいたのは「都道府県パズル」と「首都圏鉄道路線図」である。

都道府県パズル」について。地図というただでさえ好きであった媒体に、パズルという楽しませてくれる要素が加わっているのだから、幼い私がハマらないはずがなかった。パズルだから当然最初は都道府県の形だけであったが、そのうちその都道府県の中身(地理、交通)にも関心が向くようになる。そして小4で地図帳を手に入れて以降、各都道府県の様子を知るべく地図帳を眺める生活が出来上がっていった。ここで①②が生じていったため、③を実現すべく「全ての都道府県に行きたい」という思いが生まれた。

「首都圏鉄道路線図」について。私は諸事情により幼稚園入園以前から、ある首都圏私鉄に乗る機会が多かったのだが、どうやら扉上の駅名一覧を見るのが好きで、3歳にしてその路線の全駅名を覚えていたらしい。そのうちJRに乗る機会も出てくるわけで、するとJRの路線図(今は「路線ネットワーク」と書いてあるアレ)に釘付けになる。そこに書いてある範囲を一通り覚えると、今度は範囲外(常磐線の高萩より先とか)に興味が向くわけで、市販の全国鉄道路線図を眺めるようになった。ここで①②が生じていったため、③を実現すべく「日本の全ての鉄道路線に乗りたい」という思いが生まれた。

……ゆえに、私の欲求は「全ての都道府県に行きたい」と「日本の全ての鉄道路線に乗りたい」が核となっていた。

 

当初私は、「47都道府県への到達」「国内全鉄道路線完乗」であれば、大学4年間でも達成できそうだと思った。しかし実際に始めてみると、「47都道府県への到達」は大学2年の時点で達成できてしまったため、「47都道府県への宿泊」へと目標を引き上げることとなった。一方で「国内全鉄道路線完乗」には時間が足りず、逆に「JR全路線完乗」へと目標を引き下げることとなった。

 

……ここで補足となるが、私の旅については、「47都道府県への到達/宿泊」「JR全路線/国内全鉄道路線完乗」は【それ自体を目的としている】ということに留意されたい。魅力的な場所を訪問していった結果として達成されれば良い、というものではなく、明確にそれを目指しているのである。

例えば福井県を例に挙げれば、北陸本線で通過しただけで「福井県到達」(2018/9/2:[旅9]参照)、夜中のえちぜん鉄道勝山永平寺線を往復するだけで「福井県鉄道路線完乗」(2022/2/23:[旅44]参照)、これらは私にとって許容されるのである。別に「福井県の観光地」や「昼間の車窓」を確認できなくたって、「福井県という地域が存在すること」や「福井県内に地図通りの鉄道路線が存在すること」の確認はできるのだから。また私にとって福井県初宿泊は観光地の芦原温泉であった(2020/8/24:[旅54]参照)が、これも「芦原温泉に宿泊したい」より「福井県に宿泊したい」が先に来ているものであり、当時GoToトラベルで安かったから芦原温泉に泊まれただけであって、別に福井駅前のネカフェでも許容されていたのである。

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……こう言うと、奇妙な目で見られるかもしれない。せっかく遠出するのにそんな感じで良いのか?ただそれだけのために金と時間を使って虚しくないのか?と。しかし考えて欲しい。一口に遠出といっても、人によって・シチュエーションによってその目的は異なってくる、このことは疑いなかろう。福井県への訪問だって、「芦原温泉目当ての温泉ファン」と「丸岡城目当ての城郭ファン」と「一乗谷目当ての歴史ファン」と「恐竜博物館等目当ての恐竜ファン」と「永平寺に行く曹洞宗信者」と「サンダーバード目当ての鉄道ファン」と「福井県の恋人に会いに行く人」で行程は異なるし、ひとえに東尋坊に行くといったって目的は必ずしも全員一緒とは限らない。私の場合、最初は「福井県という地域が存在することを確認したい人」、続いて「福井県に宿泊したい人」、続いて「福井県内の鉄道路線を完乗したい人」であったから、それに従って行程を組んだ、ただそれだけなのである。

 

かくして、私は大学生の間のひとまずのゴールを「47都道府県への宿泊」「JR全路線完乗」として、旅を計画・遂行していくこととなった。これに「今しかできないことを成し遂げたい」という思いが加わって、最長片道切符の旅が完成していく。

 

 

広い日本の中で折り合いをつけつつ、新たな目標を設定し旅を続けていく

 

最長片道切符の旅+αにより、私は大学生のうちに「47都道府県への宿泊」「JR全路線完乗」を達成した。しかし当初目標である「国内全鉄道路線完乗」は達成されていないため、今度は「国内全鉄道路線完乗」を目的とする遠出を続けることとなった。

では「国内全鉄道路線完乗」が達成されれば旅は終わるのかというと、そうではないと思う。

 

「47都道府県への到達/宿泊」「JR全路線/国内全鉄道路線完乗」を目的に旅をしているからといって、それだけで満足できるわけではない。

日本地図を眺めていると、鉄道路線が通っていない地域など多数目につくわけで、その地域の実在を確認するには「47都道府県への到達/宿泊」「JR全路線/国内全鉄道路線完乗」を目的とした旅では到底足りないのである。例えば、福井県については全鉄道路線完乗もすでに達成しているが、鉄道空白地帯にある丸岡城も訪問したいし、自治体として鉄道の通っていない越前町や池田町にも行ってみたい。「福井県という地域が存在すること」や「福井県内に地図通りの鉄道路線が存在すること」だけでなく、「福井県の観光地」や「昼間の車窓」もできれば確認したいのである。

 

しかし、地図・路線図で確認した全ての土地を訪問することは、大学4年間のみならず人生全てかけても到底不可能である。「狭い日本」などのたまう人もいるが、日本は広い。一定の目標を設定するにしても、それが「国内全ての名勝を訪問」「国内全ての郵便局を使用」などであれば困難極まりない。

だからこそある程度は、達成可能な目標(「47都道府県への到達/宿泊」「JR全路線/国内全鉄道路線完乗」など)を設定しそれを第一目的とした旅を実施して、その中で訪問できればラッキー、みたいな感じで折り合いをつけるしかないのである。福井県であれば、「47都道府県への到達/宿泊」「JR全路線/国内全鉄道路線完乗」を目的とする旅の中で、行程に余裕があったから東尋坊訪問ができてラッキー、福井中央郵便局を使用できてラッキー、といった感じである。

 

一方で、人生にはまだまだ時間があるというのも事実である。そのため「国内全鉄道路線完乗」の達成後又は達成の過程の中で、例えば「現存十二天守全訪問」という目標を達成するのは難しくないし、「国内全市町村到達」という目標も「国内全ての郵便局を使用」ほど達成不可能とはいえない。

そのため、達成不可能ではない目標を新たに設定し続け、訪問できる土地を増やしていく、という感じで旅を続けることは十分想定される。福井県であれば、「現存十二天守全訪問」「国内全市町村到達」の目標のもと丸岡城越前町・池田町に足を運ぶ、その行程の中で名勝や郵便局にも行けたらラッキー、といった感じで。

 

かくして、私は社会人になった今も「国内全鉄道路線完乗」を目標に遠出を続けるし、たとえそれが達成された後でも無数の行先候補がある中、ある程度の折り合いをつけながら新たな目標を設定して旅を続けると思う。

 

なお、私の今の旅の特徴として「国内で完結する」「行き当たりばったりでなく、計画を立てて実行する」というものがあるが、これは上記スタイルゆえのものである。そもそも日本自体が広いからまず国内に焦点を向けて旅をし、目標がありそれを目的とするからこそ綿密な計画を要する。

 

 

楽に達成できる、という側面も否めない

 

旅というのは、スタイルによっては案外楽なものである。

 

直前に述べた通り、私の旅は「国内で完結する」「行き当たりばったりでなく、計画を立てて実行する」スタイルである。このスタイルでいる限り、盗難、遭難、食糧不足、野宿といったリスクが小さく安全に旅を実行できるし、万が一の事態があっても、電波が通じる地域であれば外部への救援を要請できる。

また、私は普通自動車の運転免許をもっているものの、「国内全鉄道路線完乗」を目標としている関係で公共交通機関の使用を好む。集中して自ら自動車を運転する必要が無いため、(乗り過ごしに気をつけさえすれば)割と気を抜きながら旅をすることができる。

そして、最大の特徴が、一人旅がメインであるというところか。

 

一人旅というのは、まず自らの体力のみに合わせた行程を組むことができる。そのため若い今であれば、朝早くから夜遅くまでずっと移動しているような行程や、小走りを必要とするような無理ありげな行程を組んでも、自分の体調さえ良ければ遂行できる。

また、一人旅は日程の融通がききやすい。そもそも同行者との日程調整が不要だし、予定が入ったり体調を崩したりで遂行できなくなった場合も、突然めんどくさくなった場合も、すぐに取りやめできる。逆に日程を延ばしたくなった場合や、前日や当日に突然遠出したいと思い立った場合も、交通機関や宿の予約以外に何の調整も要らず実行できる。旅をしている最中も、追加で寄りたい場所が出てきた場合などは、行程を柔軟に組み換えることができる(最長片道切符の旅ではよく柔軟に組み替えたものだ)。

そして、行程のハードさや日程の融通以外においても、同行者がいないため気を遣う必要がない(もちろん周囲の他者に不快な思いを与えぬよう気をつける必要はあるが)。都合によりパソコンやスマホでずっと作業しながらの旅になっても、計画の不備による行程の乱れがあっても、食事が疎かになっても、誰にも迷惑はかからないし文句を言われない。とても自由なのである。

逆に、長時間孤独でいるのがしんどいため、一人旅は辛いという人もいるだろう。それも分かるが、しかし私の場合は一人の時間を過ごすことに慣れているため、何も辛くないどころか自由で楽しい行為なのである。この点、「一人旅は移動式引きこもり」という言葉は言い得て妙で、知り合いと離れ一人の気楽な時間を選ぶ私は、引きこもりのようなものである。

 

大学生活の最後、数ある「今しかできないこと」の中から国内での長旅という対象を選び最長片道切符の旅を実行したのには、このように案外楽に達成できるから、という側面も無視できない。

 

「なぜ、旅をするのか?」という問いに対する答えとして、「自分探しのため」というのは一つの模範回答であろう。しかし私の場合、ここまで読んだらもう分かると思うが、残念ながらそんな崇高な目的で実施しているのではない。旅を通して成長しようなど、一切考えていない。「旅」という言葉を使うのも憚られるのでは、崇高性を感じさせる要素のない「遠出」という用語に留めた方が良いのでは、と思うくらいである。

私にとって旅というのは、地図・路線図で知った情報を確認する「既知の場所の追認」という楽しい行為であり、それが自分にとって楽だからこそ実施しているに過ぎないのである。つまらない回答だと思うが、これが事実なのである。

 

 

一方、思いがけない出来事も面白い

 

この通り、私が実施する旅は「既知の場所の追認」であり、行程も十分に計画された極めて安全なものである。基本的には予定通り粛々と進むものであって、何が起こるか分からないというワクワク感はさほどない。

しかしながらその中でも、思いがけない出来事というのは、たびたび生じるものである。

 

時間があったため急遽降りた駅、下調べをしていなかったが訪問の価値があった観光地。(2018/3/21:[旅3]参照)

行程のミスによる、雨降る夜中の長大な徒歩。(2019/8/14:[旅21]参照)

バスを逃したところの、救世主であるタクシー相乗り。(2020/3/6:[旅26]参照・[雑28]にも記載あり)

ネカフェに向かって夜中の田んぼの中を歩く中、ふと空を見上げると、満点の星空。(2021/11/6:[旅56]参照・[雑28]にも記載あり)

大雪で列車が運休、余った時間で初めて訪問した、雪国のある街の風景。(2022/2/6:[旅35]参照)

ゲームの関係で本来下車しない駅で下車し、歩いていたらたまたま見つけたローカルチェーン、あまりにも美味の丼。(2022/2/28:[旅46]参照)

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思いがけない出来事というのは、いくら強運の私であろうと、いくら計画された行程に従った旅であろうと、良い意味でも悪い意味でも起こり得る。良い意味での思いがけない出来事というのは、その旅で得られるものが増えるという点で、単に嬉しい。悪い意味での思いがけない出来事も、それは必ずしも悔しいものではなく、代わりに別の予定外のことができるようになる等して、良い思い出になることも多い。結論、思いがけない出来事というのは面白いのである。

このような出来事は、行き当たりばったりスタイルの旅であれば多いかもしれない。しかし行き当たりばったりスタイルは遭難や野宿といったリスクを伴うものであり、一定の目標の達成に向け計画を立て実施する今のスタイルと比べ、私は割に合わないと考えている。リスクの小さい今のスタイルの中で、それでも思いがけない出来事で面白さを感じることができる、それこそが良いものである。

 

 

集団旅行の良さ

 

一人旅が好きな私だが、不思議なことに、一人旅よりも集団旅行の方が楽しい思い出として残るのである。最長片道切符の旅においても、中断してサークルの卒業旅行に参加していた期間と家族旅行に行っていた期間が、肥前山口駅到着時以上に楽しい思い出として、強く印象に残っているものである。自分が計画しない旅行であれば、基本的に「47都道府県への到達/宿泊」「JR全路線/国内全鉄道路線完乗」といった目標からは外れてしまうにもかかわらず。

一人旅は自由な分全ての責任が自分に生じるが、集団旅行の場合、自分が計画者でない場合は自分が行程の責任を負う必要がなく気楽である。また、レンタカーを使う旅程の場合、集団の方が一人当たり費用が少なく済む。そういった気楽さや安さも一つ要素としてあるとは思うが、別に自分が計画した公共交通機関での旅(例えば2020/10/31~11/1の西日本大移動:[旅54]参照)であっても集団旅行は楽しい思い出になるので、別の要素があるのだろう。

 

先日、修学旅行生と同じ航空便に乗り合わせる機会があった。往路便出発前の元気な様子、離陸の瞬間に上がる集団での歓声と拍手、着陸後の浮ついた空気感、こちらとしても微笑ましくなったものである。また、別の学校の復路にも立ち会ったが、友と話しながら搭乗していく生徒とその写真を撮るカメラマン、乗務員が機内アナウンスで言った「皆さん修学旅行は楽しかったでしょうか、この思い出をずっと大切にしてください」といった言葉、非常に印象に残ったものである。

 

ふと、自分の修学旅行の思い出を振り返ってみる。自分の修学旅行も確かに、自分の記憶に強く残っていた。そしてそれは、単に未知の場所への訪問が達成されたからのみならず、青春の一ページにおける「二度とないタイミングでの二度とないメンバーでの旅」であるからこそ、印象深いのではないかという気がする。「離陸の瞬間に上がる集団での歓声と拍手」や「友と話しながら搭乗していく生徒の写真」は、二度と再現されないだろう。この点、卒業旅行も同じだと思う。

だからといって、「いつメン」での旅が魅力的でないわけはない。私も特定の友人と何回も旅をしたことがあるが、これは何回目でも楽しいものである。気の知れた仲間と一緒にいるのはそれだけで楽しいし、旅の思い出を共有できるというのも良いのだろう(私もその友人とはよく過去の旅の話をするものだ)。旅の最中に「元気な様子」「浮ついた空気感」になるのも無理はない。これは、落ち着いて実施される一人旅とは大きく異なる点である。

そもそも、大切にしている思い出というものは、往々にして美化される。2021年10月に実行した北海道・福井一人旅([旅56]参照)などは、オンライン授業の受講や卒論関係作業を実施しながらの旅であり、終了直後には「日常の延長にある旅は楽しくない」と評していたが、今はとても楽しい思い出として残っているものである。不満な点が少しあっても、全体で楽しければ楽しい思い出として残り、そしてその思い出は集団旅行であれば、同行者と共有できるものになる。

 

一人旅と比べて集団旅行というのは、同行者の存在による自由度の低下はデメリットとなるが、一方で同行者の存在はメリットにもなる。そしてその唯一性や、思い出を共有できる性質ゆえに、集団旅行は特に楽しい思い出として残るのではないだろうか。

 

 

また、次の場所へ

 

「国内全鉄道路線完乗」や「現存十二天守全訪問」「国内全市町村到達」に加え、私は新たに「温泉むすめのいる温泉地制覇」という目標を定めた。そしてさらに、誰も考えないような目標を新たに定め、その遂行に向けて大きな計画を立てて実施し始めた。

その目標が何か、どんな計画が立っているかは、次の記事で語ることとしよう。

 

「既知の場所の追認」という楽しくて案外楽な作業を進めながら、思いがけない出来事による面白さも楽しみ、別の楽しさを有する集団旅行も積極的に参加していく。

 

私はまた、次の場所へ出かけていく。

[雑38]観たものをひたすら述べていく⑤

この記事の意味については、これまでの記事を参照されたい。

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オタクと言い切れない人間がとりあえず語る「観たものをひたすら述べる」シリーズだが、[雑36]執筆以降1年半更新しなかった結果、かなりストックが溜まってしまった。

そこで、新規に50タイトルを視聴した今、前回更新以降2023年9月までに視聴した作品について語ろう。

 

※以下の内容は、完全に個人の主観によるものであり、特定の作品について批判することを目的とするものではない。また私はとてつもなく雑な人間なので、「やる気のある時に書いた感想」「やる気のない時に書いた感想」でとてつもなくばらつきがある。物によっては「感想」と呼ぶにも恥ずかしいレベルのものもあるが、ご容赦いただきたい。気になったら自分の眼で確かめるのが一番。

 

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……と行きたいところだが、今回はまず、私のイチオシのマンガを一作紹介したい。

 

00. パステル家族(連載2013〜2023)

頭空っぽにして読める度…☆☆☆☆

心えぐり度…☆☆☆☆(話による)

女子高生3人及びその家族等の日常を描いた群像劇。

WEBタテ読みマンガを世に知らしめたマンガアプリ「comico」にてサービス開始当初から更新されている長寿作品。さらに作者の体力が半端なく、毎週連載でこれまで一回も休載が無い上に、そもそも当初は週2連載をしていたし、さらに単行本化にあたっての加筆修正の量がエグく、comico発の作品では圧倒的な話数を誇る。サービス変更を経てオリジナル作品が減りBL堕ちして読者も著しく減ったcomicoにおいて、『ミイラの飼い方』とともに黎明期の色を残す数少ない作品である。

ReLIFE』『ネト充のススメ』『ナンバカ』『ピアシェ』などcomico発人気作品がアニメ化されていくのとは対照的に、一定の人気がありながら最後までアニメ化されなかった作品。しかしながらその内容は、確かにインパクトには欠けるかもしれないが、「悪人のいない世界」における日常生活の描写を通して我々に大切なことを気づかせてくれる唯一無二のもの。私個人もマヨの「働いている人はみんなカッコいいんだよ!」という言葉に支えられている。基本的には日常系コメディ(ケイちゃん登場回、タクオが家で一人の時に発狂している回はじめ)でとても気楽に読めるが、その世界観の上で内容の濃い長編が盛り込まれており、この長編が心に響くものを持っているのである。長寿作品ゆえに、伏線の回収もすごい。

無料公開だと「福引の回」「遊園地の回」が、レンタルだと「夏の思い出の回」「警察官の回」「かおりの企みの回〜恋人の回(タクオ恋愛編)」「転校生の回」「明河原家の回」「里を出る回」「ほのめと京子の回」「教師の回」「パパの仕事の回」が、単行本限定だと「神社の回」「引っ越しの回」が特に神回。あと「海水浴の回」の最後は個人的にとても好きだし、恋愛要素アリの「マヨの両親の出会いの回」「夏のこもれびの回」は推し長編だし、「迷子の回」「しおりとお出かけの回」等「開眼したしおり」が活躍する回はとてつもなく良いし、その他も神回大量。コメディ方面だと「フリマの回」「テニスの回」「タクオ寿司の回」がイチオシ。というか、あらゆる回が素晴らしい。

作者により年内の連載終了が宣言されている。一気読みして作者を応援するなら今。素晴らしい作品なので安心して見ててね!(「あんしんしてみててね!」ではない。ここではひらがなでなく漢字である。)

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それではアニメ作品の話に戻ろう。

 

19'. 邪神ちゃんドロップキックX(2022夏)

OP…B4+A3’

ED…B24+B3’

次回予告…BGM+シーン重ね映像+コメント+タイトル

頭空っぽにして見られる度…☆☆☆☆

心えぐり度…☆

邪神ちゃんドロップキックの3期。邪神がドロップキックして召喚者を○そうとする、普通に流血シーンのある作品……と書くと残酷そうだが間違ってはいない。しかし実際はエグいほどのギャグ作品(の中に友情のある作品)。作品自体もさることながら公式による違法アップロード対応、クラファン、自治体とのタイアップ、ガッツリ初音ミクコラボなど斬新な取り組みを大量に行った異常アニメ(褒め言葉)。邪神ちゃんの語尾は「ですの」だが「風紀委員ですの!」は別作品ですの。

 

20'. 乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転載してしまった…X(2021夏)

OP…B3→A14

ED…B4

次回予告…BGM+シーン重ね映像+コメント+タイトル

頭空っぽにして見られる度…☆☆☆

心えぐり度…☆☆

はめふらの2期。悪役令嬢に転生したが悪役とは思えない振る舞いにより無意識に周囲をたらし込むようになったオタクの話(?)。だいたい平和な転生モノ。OP映像好きな作品の一つ。2期の最後(最終話ではない!)に1期OPが流れるやつね。

 

33. 魔法少女まどか☆マギカ(2011冬)

OP…C4+B2→C1

ED…C4

次回予告…イラスト+コメント+タイトル

頭空っぽにして見られる度…☆

心えぐり度…☆☆☆☆☆(いや、測定不能か?)

まどマギ。その美少女ヒーローアニメっぽいタイトルと裏腹に、あまりにも救いの無い内容。「奇跡も、魔法も、あるんだよ」その代償は果たして。何食ったらこんな物語が思い浮かぶのかと本気で疑問に思える。化物語同様、シャフトのやばさがよく分かる作画。第5話までしか視聴していなかった自分は「予想を遥かに超えて衝撃的な内容だった」とか抜かしていたが、この作品はそんなものではない。カオスとかそういう次元ではない。なお、おとわ○かの最大の被害者こと『コネクト』がOPであることで知られる。私も名曲を純粋な心で聴くことができなくなってしまった。別にテ○ーダの○○○なんてどうでも良い……のになんで頭に浮かんできちゃうんだ!!!!!ちなみにこのすばと同様にOP映像中にタイトルが流れる系作品。

 

50'. 狼と香辛料II(2009夏)

OP…A2

ED…B4

次回予告…タイトルのみ

頭空っぽにして見られる度…☆☆

心えぐり度…☆

中世ヨーロッパ的世界観における、行商人と狼少女のファンタジー作品の2期。2期では一悶着あるが、全くいかがわしい関係にならない、深い信頼で結ばれた2人の関係性が良い。さらに新作アニメが製作されるようです。

 

55. 櫻子さんの足下には死体が埋まっている(2015秋)

OP…A1

ED…C4

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度…☆☆

心えぐり度…☆

櫻子さん。北海道旭川周辺を舞台としたミステリー。タイトルの通り死体が出てくるので、それなりに重い内容。かなり高度な内容で、ながら視聴だと全然理解できないが、ちゃんと観るとかなり面白い。大泉洋(をモデルにしたキャラ)が出てくる。

 

58. ひぐらしのなく頃に(2006春〜夏)/ひぐらしのなく頃に解(2007夏〜秋)/ひぐらしのなく頃に業(2020秋〜2021冬)/ひぐらしのなく頃に卒(2021夏)

OP…B24、B24、A14、A14

ED…D2、B4、B24、B24、B24

次回予告…ED曲+台詞+タイトル+「あなたは信じられますか?」、ネタ+タイトル、タイトルのみ、タイトルのみ

頭空っぽにして見られる度…☆

心えぐり度…☆☆☆☆

雛見沢を舞台とするミステリー。ホラーというよりサスペンス。世界線を理解していない状態だとかなり訳わからないながら視聴することになるが、理解した途端面白くなる。業は途中から別の作品か?って感じになるし、結局沙都子のエゴに見えてしまう。

 

60. 変態王子と笑わない猫。(2013春)

OP…A4+B5→A1

ED…C3’

次回予告…タイトルのみ

頭空っぽにして見られる度…☆☆☆

心えぐり度…☆☆☆

変猫。変態横寺を中心としたファンタジーなラブコメ。筒隠月子だの小豆梓だの謎に韻を踏んだ登場人物の命名。「横寺弟」という存在。私は小豆梓推しです。

 

78'. ヤマノススメ おもいでプレゼント(2017/10)/ヤマノススメNext Summit(2022秋)

OP…A1(NS)

ED…B2(NS)

次回予告…なし(NS)

頭空っぽにして見られる度…☆☆☆☆☆

心えぐり度…☆☆☆

(おもいでプレゼント)ヤマノススメOVA。良い話。ここな報われてほしい。ひなた良いやつ。

(NS)3期で終わりかと思っていたら4期制作が発表されて夢かと思ったやつ。現実の変化に合わせて、富士山へのバスの出発地が新宿駅旧バスターミナルからバスタ新宿に変わっている。毎話違うEDが最高すぎる。話によって作画レベルが異なるが、背景はいずれもハイクオリティ。良い終わり方をしてくれた。

 

112. ぼくたちは勉強ができない(2019春)

OP…A1

ED…B4’→B24

次回予告…シーン重ね映像+タイトル

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆☆☆

生徒の教育を生徒に任せるとは如何なるものか。小論文は論理的たるべきで、文学的だとむしろ良くない。心理学を学んでも相手の心理は分からない、やるなら社会心理学行動経済学。1週間同じテストやっても点数が上がらない、ここまでできないと普通に学習障害(LD)。設定にはいろいろとツッコミどころのある作品。ただし少年マンガのラブコメとしては個人的にかなり好きな作品。本編映像の途中でEDのイントロが流れ始める系作品。『とある魔術の禁書目録』同様ラッキースケベの時に流れるBGMが愉快な作品。

 

122'. この素晴らしき世界に祝福を!2(2017冬)

OP…B3+A2

ED…B2

次回予告…なし(手紙)、なし(手紙)

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆

このすば2期。カスマさん。クズマさん。カズマが冤罪に問われるなどあるが、やはり異世界転生/転送系の中では圧倒的に視聴にかかるストレスが小さい。

 

124'. 青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない(2023/6)

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆☆

「思春期症候群」の少女たちと梓川咲太を描く『青ブタ』の映画第二弾。私が稚内を訪れた2023/9/13時点で(東京では上映終了ばかりのところ)稚内駅の「日本最北のシネコン」にて上映中だったので、観てみた。「シスター」すなわち咲太の妹である花楓がメインの作品。受験を控えた花楓が外に出て、自分で選択していく作品。なお共通テストでなくセンター試験が登場する。

 

131. 月刊少女野崎くん(2014夏)

OP…A5→B3→A2→B4

ED…C24

次回予告…(次号予告)BGM+ネタ+シーン重ね映像+タイトル

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆☆

心えぐり度……☆☆

少女漫画家をやっている男子とそのファン(?)の女子のラブコメ。コメディ要素強め。友人に「お前絶対好きそう」と言われた通り、私の大好きなタイプの作品。観てて元気になる。やっぱ御子柴が一番推せる。

 

134. サーバント×サービス(2013夏)

OP…A6

ED…B2

次回予告…なし(サバクイズ)

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆☆

心えぐり度……☆

サバ。わかば区役所。登場人物が全員何かしらヤバい。高津カリノワールド。細かいことは良いからとりあえず観てくれ。

 

139. ひげを剃る。そして女子高生を拾う。(2021春)

OP…A1

ED…B2

次回予告…タイトルのみ

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆☆

ひげひろ。体毛廃止アニメ。社会人独身男性が女子高生を拾っていろいろ(健全)なことをする話。タイトルもこの説明もアレだけど、実際は普通にめっちゃ良い話。次回予告の後に来る一枚絵がはいふりと同じ感じ。OP映像は「シンプルなのに忙しい」。


140. 僕らはみんな河合荘(2014春)

OP…B5→A3→B2

ED…A1+B4’

次回予告…BGM+シーン重ね映像+ネタ

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆

「河合荘」入居者の繰り広げるドタバタコメディ。めちゃくちゃテンポ良い。すべてのキャラがクセ強い。「ひとりだけどぼっちじゃない」……。CV佐藤利奈による邪魔が良い味を出してるラブコメ。かなり好きな作品。スマホでなくガラケー。ちなみに『恋愛ラボ』も描いてる原作者の宮原るりさん、コミックエッセイの作品『小学生日記』がめちゃくちゃ面白いので皆さんぜひ読んでみて。


141. 白い砂のアクアトープ(2021夏〜秋)

OP…A14、A1

ED…B1、B1

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆☆☆

P.A.WORKSのオリジナルアニメ。水族館。舞台はうちなーの南城市(実在)。『花咲くいろは』『SHIROBAKO』『サクラクエスト』に次ぐ(?)、仕事をテーマにしたPA作品。登場人物が高校生であることにこだわらずも、夢を追いかける少女を描く、「青春アニメ」の圧倒的に正しいあり方。しかしまあ、相変わらずPAは水の情景を描くのが上手いですね。水といいEDの雰囲気といい、『凪のあすから』(監督が同じ)を思い出す(テーマやOPは全然違う)。……最終回の20分ごろからのこの感じ大好きだ!!!!!(観て確かめてください)Prime Videoのレビューはかなり散々だったが、『花いろ』の登場人物のクズさと『凪あす』の人間関係のドロドロさに慣れてしまえばこの作品の登場人物なんて大したことない。


142. プラスティック・メモリーズ(2015春)

OP…A2

ED…C4

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆☆☆☆

プラメモ。アンドロイドの「ギフティア」と人間の物語。オリジナルアニメ。まごうことなき泣きアニメ。1話から涙が出てきた。OPとEDが完全に泣かせにきている(OPの最後のアイラの表情毎話違うの良いぞ)。アマプラのレビューにもあったが、1話からある程度結末が分かってしまう作品(この点がKey・麻枝准作品との違い?)で、だからこそ覚悟して視聴できる。ただそれは悪く言えば「驚きがない」「テンポが悪い」ということであり、同年次クールに放送された『Charlotte』の方が勢いはあったと思われる(最も『Charlotte』は最終話に詰め込みすぎなのだが)。


143. きんいろモザイク(2013夏)

OP…A14

ED…B3’

次回予告…BGM+漫画調+やりとり+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆☆

心えぐり度……☆

きんモザ。きららを代表する作品、日常系を代表する作品。原作完結。視聴する前から「絶対私の好きな作品だわ」って思ってたけど案の定だった。ただまあ、きらら作品の中でも特に刺激に欠ける作品ではある。それが良いのだが。陽綾。


144. 冴えない彼女の育てかた(2015冬)/冴えない彼女の育てかた♭(2017春)/冴えない彼女の育てかた Fine(2019/10)

OP…A1+B34、B24

ED…B4、B2

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆

冴えカノ……って略称だから「さえないかのじょのそだてかた」だと思ってたんだけど、「さえないヒロインのそだてかた」なのかよ。分かりやすいラブコメ。設定は異色かもだけどラブコメとしては王道。いつぞや1話だけ観て「主人公に都合良すぎる」って切ったけど、1期最後まで観たら意外とちゃんとした内容だった。ただし、主人公に都合良すぎるのは事実。加藤恵は優しすぎる。なお私は澤村・スペンサー・英梨々推しです。聖地は和光市


145. 俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」としてゲッツされた件(2015秋)

OP…A24

ED…B4

次回予告…BGM+シーン重ね+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆

庶民サンプル。原作は「拉致られた」なのだが、なんらかへの配慮なのかアニメ版は「ゲッツされた」になってる。内容はタイトルの通り。普通に主人公不憫案件。謎のダンディ坂野リスペクト。『ゆるゆり』はじめ一迅社の実在のマンガやラノベがめちゃくちゃ出てくるし、アッカリーンの扱いが相変わらず。なお私にとっては、アニメ視聴より前にOP曲とED曲を知った(Spotifyで出てきた)作品。そしてOP映像が独特。第5話4:23の効果音が好きなんですが誰か分かる人いますか。


146. 山田くんと7人の魔女(2015春)

OP…A4

ED…B4’

次回予告…BGM+ネタ+シーン重ね映像+タイトル

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆☆

やまじょ。キスをしまくる話……別に間違ったことは言ってない。少年漫画っぽい単なるお色気ハーレムもの……では全然なくて、かなり凝った設定の超能力系青春アニメ。OP映像、凝ってないけどめちゃくちゃ好き。原作はアニメとガチで全く異なる結末っぽいので原作も是非。


147. ゴールデンタイム(2013秋〜2014冬)

OP…B24、B2+C4

ED…C4’、B4’

次回予告…OP曲+ネタ+シーン重ね映像+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆

記憶喪失統失男とクソ女の重い話。CV堀江由衣のメインヒロインが超絶メンヘラクソ女と思ったら、もう1人の中心メンバーの女も超絶面倒女だった(18話あたりから)。御涙頂戴シーンもそれなりにあるのにこれらクソ女のせいで全然共感できないため泣けない(あくまでも個人の意見)。これに対してCV茅野愛衣のサブヒロインの良さが際立ってしまう。そして男サイドだと二次元くんが超絶良いやつ。なおCV佐藤聡美の女は全く別の意味でやべえ、『けいおん!』の律の比じゃなくやべえ。『かのかり』『ぐらんぶる』『宇崎ちゃん』同じく大学生を描いた作品だが、なぜこうも大学生を主人公とする作品は高校生主人公作品と比べ登場人物がヤバいのか。なお大学のモデルは完全に法政大。大学生を描いていることもあり、第3話では大学の〇〇〇サークルの新歓の闇がよーく分かる。作者は『とらドラ!』と一緒の女性だが、こちらの作品の方が重い(『とらドラ!』も大概だがな)。一般のラブコメとはかなり異なる作風で、男性作家じゃこれ書けないよなーって感じ(というかこの作品は他作品と比較すると「女性にとって都合の良い男性」が出てくる感じがちょっと……)。OPを省略しないアニメ。前期OPは若干中毒性ある曲。


148. DEATH NOTE(2006秋〜2007春)

OP…A14、A24(カオス)

ED…B24、C24

次回予告…コメント+シーン重ね映像+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度……☆

心えぐり度……☆☆☆

名前を書いたらその人が死ぬノートを拾ってしまった夜神月らの話(超絶有名)。高度な頭脳戦が繰り広げられ、観ていてハラハラする。この作品が面白くないわけがない。後半のOPがあまりにもカオス。


149. サクラクエスト(2017春〜夏)

OP…A1、B1+A4

ED…D2+B4’、B4

次回予告…BGM+サンダルさんのコメント(ネタ)+シーン重ね映像+タイトル

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆☆☆

「内定したのは、国王だけでした。」

花咲くいろは』『SHIROBAKO』に続くP.A.WORKSオリジナルアニメの「お仕事シリーズ」。現実の「まちおこし」の課題などを映し出していて超絶示唆的で、「まちおこし」なる概念についてずっと考えている私にとっては視聴後すぐに大好きな作品となった。舞台の間野山市のモデルはPAのある富山県南砺市城端・井波)。現実の地域をモデルとした丁寧な背景に定評があり、そして「地方」に本社を置いているPAが作る作品だからこその重みと解像度の高さ。

「地方住民の東京への憧れ」「まちおこしのイベントをするにしても予算が足りない」「その取り組みは地域のためでなく自己満足かもしれない」「人を呼び込むにも宿泊施設が足りない」「一過性のイベントで地域の知名度が上がるといえ、観光客の定着には結びつかない」「まちおこしの本来の目的を忘れてしまう」「地域から出たい人、地域に残ることを決めた人」「途絶えているということは、誰も必要としていないということだ」「コミュニティを解体するということは、その土地の文化を解体するということ」「いずれ無くなる地域の記録を残す」(←この3つの鈴原氏の言葉は本当に考えさせられる)「娯楽が無いなら自分で作る」「シャッター商店街は店舗兼住居が多いから店舗の貸し出しは難しい」「誰かを犠牲にするのはまちおこしでなくただの開発」「よそ者の1人に嫌な思いをさせられたけど、それが大ごとになってよそ者に優しくない地域にはなって欲しくない」「合併すると行政サービスは良くなるかもだけど人口少ない側の意見は通りづらくなる」「過去に固執するのではなく、新しいものを取り入れていく」残酷なまでに様々な現実を映し出す。そして斜め上のオチも、ある意味現実的。第19話にはいらすとやっぽいやつが登場し、ここにも「現実」との近さを感じさせる。

なろう系をはじめとするファンタジー、きらら作品をはじめとする日常系、定番のラブコメやお涙頂戴のラブストーリー、これらが跋扈する2010年代後半においてまるでアニメっぽくないアニメ(どちらかといえば朝ドラっぽい)(「この作品がアニメである必要性は?」と言われたら答えに窮するかもしれない)。PAの「お仕事シリーズ」三作(『白い砂のアクアトープ』はちょい違う?)や、制作会社・反響の大きさこそ違うが『宇宙よりも遠い場所』と同じく、少女ばかりのサムネ見て「萌え」を期待して視聴すると期待はずれ、中身がめちゃくちゃ濃くてとてつもなく考えさせられる作品。舞台やキャラ設定はまるで違うが、『うどんの国の金色毛鞠』(こちらメインキャラは男性)にも近いものを感じる。放映当時「つまらない」という評価が多かったと知って「そんなバカな!」と思ったが、確かに刺激あるいは百合を求めるオタクにとってこの作品はどちらにも欠けており凡庸かもしれない、しかし逆に現実世界の解像度があまりにも高く、「まちおこし」に少しでも関心を抱いているあるいは「生まれ故郷」について少しでも考えたことがある人にとってはオタクでなかろうがとてつもなく響き得る作品だと思う。評価されない理由は至極理解できるが、もっと評価されてほしい良作

何もお涙頂戴な描写など無いのだが、7話・18話・最終話は特に目頭が熱くなる。個人的には超絶評価してる『花いろ』よりも好き。……好きな作品に占めるPAオリジナルの作品の割合が高すぎる、こんで現在未視聴の『TARI TARI』や『グラスリップ』なんて視聴したらどうなってしまうのだろうか。そしてPA作品あるある(?)、前座なしに0:00から始まるOP。OPは『白い砂のアクアトープ』、EDは『花咲くいろは』に雰囲気が近い気がする。なお『花咲くいろは』と違って北陸新幹線が開業している(切符の券面の「経由」が「新幹線」)。OPもEDも名曲だし、個人的には劇中でBGMとして流れるAlstroemeria_pinkがイチオシ。


150. 恋と嘘(2017夏)

OP…B34+B1+A2

ED…B4

次回予告…BGM+ネタ+シーン重ね映像+タイトル読み上げ+イラストカード

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆

政府により婚約者が決められた世界の恋愛モノ。ヒロインの片方がピュアな女、片方が美人なのにめんどくせえ女(CV花澤香菜……)。深夜まで普通に働いてる厚労省職員……。おめめぱっちりの絵が個人的に嫌い(完全に個人的意見)で1話で視聴を切ろうと思うなどしたが、ストーリーは悪くなかったので切らずに視聴。でも正直ところどころでなんか腹立つ作品……。特に竹田のシーンなど、声優の演技に絵が負けてる部分がある。古墳についてちょっと詳しくなれる作品(嘘は言ってない)。ロミジュリの劇を文化祭でやる作品1。


151. 政宗くんのリベンジ(2017冬)

OP…A1

ED…B24

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆

政宗くんがリベンジするラブコメ。和泉正宗(『エロマンガ先生』主人公)でなく真壁政宗。CV早見沙織という最高の男キャラ。CV小倉唯の母親とかいう異常概念(ロリババア)。いわゆるラブコメという感じだが、普通に面白い。ラノベ原作な感じのするラブコメ(なぜ)だが漫画原作。ロミジュリの劇を文化祭でやる作品2。祝・2期決定。


152. トリコ(2011春〜2014冬)

OP…B2’→A14、A14

(EDいろいろ)

次回予告…シーン重ね映像+ティナのコメント+タイトル

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆

世はまさにグルメ時代。言わずと知れたグルメ系作品……よく考えたら食戟のソーマ系とも孤独のグルメ系とも幸腹グラフィティ系とも明らかに違う謎系統だけど。視聴者が考えたオリジナルモンスターがたまにおもろい。ココが完全に櫻井孝宏。最終回OPで音がつく系。ティナがアニオリキャラというのはめっちゃ驚いた。


153. 吸血鬼すぐ死ぬ(2021秋)/吸血鬼すぐ死ぬ2(2023冬)

OP…B3+A24、A3’

ED…B3、A34

次回予告…BGM+シリアスシーン重ね+タイトル英語表示+”The Vanpire dies in no time.”(EDの前)

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆

『となりの吸血鬼さん』『亜人ちゃんは語りたい』『月とライカと吸血姫』とは異なる方向性の、現代吸血鬼ギャグアニメ。タイトルの通り。ガチでギャグ。絶対に電車の中で観てはいけない系アニメ。クッソ笑える。次回予告が謎にシリアスなのも良い。「製作委員会すぐ死ぬ」。とりあえず観てくれ。


154. 月とライカと吸血姫(2021秋)

OP…B24+B5

ED…B3

次回予告…BGM+シーン重ね映像+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆

冷戦期のソ連と米国の宇宙開発競争をモデルとした、宇宙を目指す男と吸血鬼少女の物語。もんげーモアイ(EMOTION)。吸血鬼の性質がかなり人間に近い(『となりの吸血鬼さん』と対照的)が、どうやら日光がダメなのは変わらないらしい(『亜人ちゃんは語りたい』と対照的)。オリジナルアニメっぽい終わり方だが、ラノベ原作。


155. サマーウォーズ(2009/8)

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆

細田守作品といえば。有名なので作品の解説の必要は無かろう……が、純粋にばあさん(陣内栄)の影響力すごすぎ!この人のやりたい通りに国動かせるレベルじゃん!と思った。そして遺影の顔が変わるのは普通に怖いよ。よろしくおねがいしまぁぁぁぁぁぁぁす!!!!!


156. 映画ゆるキャン△(2022/7)

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆☆☆

社会人になった5人が、キャンプ場を作るべく奮闘する物語。本編のテレビアニメ版については43へ(素晴らしい作品であることは言うまでもない)。映画を視聴した結論:控えめに言って最高だった。まず、「好きなこと」を共有する友人が久々に集まって一つの夢に向け突き進む、そのテーマ自体が個人的に大好きなやつ。それでもって、『ゆるキャン△』の良さと現代らしさである「チャットを使って連絡し合い、5人はそれぞれのペースで動く(すなわち強制しない)」というのが良い感じに表れており、見ていて不快な点が存在しない。かつ、現実世界の「地域が寂しくなっていっている」という残酷な点に本編以上に強くフォーカスしており、だからこそ重く響く内容になっている(cf.『サクラクエスト』)。「一つの夢に向け突き進む」系には往々にして困難が立ちはだかるが、本映画についてはその「困難」についても「地域が寂しくなっていっている」という点と少なからずリンクしており、端的にいうと現実世界の解像度が高い。すなわち、ベースはあくまでも「ゆる」であるが適度に「ゆるくない」要素が入った作品。そしてテレビアニメ同様に現実世界の景色を忠実に再現しており、聖地巡礼が捗る(名古屋駅前の某がガッツリ映っていたが無くなりましたね……)。なお本編の時系列とはかけ離れているので、主要人物の関係性さえ知っていれば原作・テレビアニメ未履修でも楽しめる気がした。ただ、イヌ子のホラ話の際に目がどうなるか、というのは頭に叩き込んでから視聴した方が良い。……あと、途中でちくわor大垣千明を憎く思うことがあるかもしれないが、ちくわも大垣も悪くない。

ところで、同じくピンク髪が出てくる地域おこし系アニメ『サクラクエスト』もそうだが、同じ「地域おこし」に対して公務員or半公務員が「本業として」動く一方民間勤めor無職が「本業以外として」動く時、後者の謝金はどうなるのだろうか、見返りとしての代金の有無により軋轢が発生することはないのだろうか、と思ってしまうことがある。


157. バケモノの子(2017/7)

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆

細田守作品といえばその2。渋谷の少年と渋天街のバケモノの人生を、CV大泉洋とCVリリー・フランキーが語る作品。父親は悪い人ではなかった。


158. うちのメイドがウザすぎる!(2018秋)

OP…B1

ED…B3

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆

ロシア少女と変態メイドのお話。タイトルの通り。異常な身体能力を駆使して恐怖すら感じる変態行為に及ぶメイド、その正体とは……?←こう書くと異常な作品に思えるが(異常作品ではあるかもしれないが)意外と健全な作品だし、かなり良い話だったりする。


159. 緋弾のアリア(2011春)

OP…B4

ED…B4

次回予告…OP曲+ネタ+シーン重ね+タイトル

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆

ヒアリ。風穴。有名な人物の子孫が色々やる作品(間違ったことは言ってない)。舞台は「武禎高校」。めんどくさい女しか出てこないので人によってはストレス溜まりそう。回ごとに微妙に変わるOP映像がかなり良い。原作小説は長期刊行中。


160. 緋弾のアリアAA(2015秋)

OP…A1

ED…B4

次回予告…BGM+シーン重ね

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆

緋弾のアリアのスピンオフ。女子生徒間の物語、「お姉様」「〜ですの」キャラ、仲良くなりたい高飛車なお嬢様キャラ、コメディ要素の割合若干高めだが変わらずアクション系でかなりシリアス、等々『とある魔術の禁書目録』に対する『とある科学の超電磁砲』のような感じがある(OPがカッコ良い一方EDが「女子の友情」感あるのも)(パチンコがあるのも?)。4年前の本編と比べて絵柄が現代風になった。本編から想像できないような重度の百合要素あり。ココアがチノの本当の姉になった世界線(※中の人ネタ)。あやねる最高。


161. ワンパンマン(2015秋)

OP…C14+A4

ED…D2

次回予告…BGM+ネタ+タイトル

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆

あまりにも強くなりすぎたヒーロー・サイタマのお話。シリアスかつコミカル。コミカル部分ばっかなのかと思ってたらかなりシリアスで深かった。OPが本当にピッタリなアニメ。「俺を讃える声や喝采なんて欲しくはないさ」Wikipediaの記事の冒頭「『アンパンマン』とは異なります。」が個人的ツボ。というか冷静に、主人公の名前が「サイタマ」ってやばくねえか。


162. ニセコイ(2014冬〜春)/ニセコイ:(2015春)

OP…A34、A3

(EDいろいろ)

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆☆

訳あり高校生達の偽物か本物か分からない恋愛の話。王道ラブコメ。超絶シャフト。めちゃくちゃシャフト。なぜこうもシャフト製作のアニメはわかりやすいのか。2期OPがLiSAの名曲。ロミジュリの劇を文化祭でやる作品3。


163. ゆらぎ荘の幽奈さん(2018夏)

OP…A14+B4’

ED…B24+B4’

次回予告…タイトルのみ

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆☆

心えぐり度……☆

不憫な霊能力者少年と、「ゆらぎ荘」の愉快な住民たちの話。『To LOVEる』系のザ・少年ジャンプという感じの作品(要は健全でなくくだらないということ)、でもくだらないから面白いんだよ。CV高橋李依のカッコ良い女性、良きかな。


164. 勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。(2013秋)

OP…A1+B3

ED…B3

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆

勇しぶ。内容はタイトルの通り。異世界ものと思わせてモデルはガッツリ静岡県掛川。途中の回から変更になるOP映像。まあ時代なんだろうが、胸がやたら強調されているのが個人的には好まなかった。


165. 日常(2011春〜夏)

OP…A4→A1+B4’→A4、B4’+B5+A14

ED…B4、B1

次回予告…BGM+物の台詞+タイトル

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆☆

心えぐり度……☆

あらゐけいいちの有名作品。シュールとはまさにこれ。GYAO!で基本的に途中に広告が入らない良作品だった。アイキャッチ?がかなり良いのだが、特に第11話の「夜に信号が赤と黄色の点滅に変わる瞬間」「朝に信号が赤と黄色の点滅から変わる瞬間」が好き。次回予告も好き……もうあらゆるところが面白い作品。京アニ


166. スーパーカブ(2021春)

OP…A1

ED…B4

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆☆

心えぐり度……☆☆

孤独な少女とスーパーカブの物語。少女はスーパーカブを買ったことで、孤独でなくなっていく。てっきりオリジナルアニメかと思っていたらラノベ原作と知って若干驚いた。極めて穏やかで、萌え要素も少なく、とても良い作品。聖地は山梨県北杜市


167. 結城友奈は勇者である-結城友奈の章-(2014秋)/結城友奈は勇者である-大満開の章-(2021秋)

OP…A14、B4→A1

ED…B3、B4

次回予告…セリフ重ね

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆☆☆☆

日常系と思って視聴したら鬱作品だった系アニメ。とはいえまどマギよりは遥かに救いがあるので安心して視聴してほしい。あと一部の話など、日常系の色もそこそこ強い(まどマギも日常系の要素ありと指摘されていたがそれより遥かに……)。2期として鷲尾須美の章があるが未視聴。


168. カノジョも彼女(2021夏)

OP…A4

ED…A24

次回予告…BGM+「彼女の2択」+シーン重ね映像

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆☆

心えぐり度……☆☆

二股以上することになる、バカ正直な男子高校生とその周囲のラブコメ。登場人物アホしかいないので耐性ない人にはきついと思われ。原作者が『アホガール』と同じなのでまあそれは。メインヒロインCV佐倉綾音なのが個人的に最高。


169. 小林さんちのメイドラゴン(2017冬)/小林さんちのメイドラゴンS(2021夏)

OP…B5→B4’+(A1→A3’)→B2、A4'+B2→B14

ED…B4’、B4

次回予告…BGM+シーン重ね映像+言葉+タイトル表示

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆

社畜OLとドラゴンメイドの話。巨乳がガチだが貧乳もガチ。モブキャラ中心にCV石原夏織とCV高橋伸也がやたら登場。京アニ作品であり滅茶苦茶綺麗。168を視聴した直後にこの2期を見たらその細かさと滑らかさにビビった。1期のOP映像は『桜Trick』に並ぶカオス度。2期はOP映像のカオス度は1期ほどではないが、歌唱難易度が高い。2期はOP映像の最初が『日常』形式。2期は例の事件以降最初の京アニによるアニメシリーズで、「シリーズ監督」の記載があるのがガチでアツい。


170. 大正オトメ御伽話(2021秋)

OP…A24

ED…B2

次回予告…BGM+コメント+シーン重ね映像

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆☆

タイトルまんまの話です。ほほえましいラブコメ。大正時代設定にしてはかなり現代っぽいがそんなこと別にいいんだよ……と言いたいところだが、個人的にはかなり気になってしまった。


171. SELECTION PROJECT(2021秋)

OP…A1

ED…B2+C3’

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆☆

セレプロ。少女がオーディションによりアイドルを目指す物語……なのだが、運営がかなりエグいことしてきやがる。さあ、最近話題の某芸能事務所の話を想起しながら視聴してみましょう!()


172. SKET DANCE(2011春〜2012夏)

(OPいろいろ)

(EDいろいろ)

次回予告…BGM+ネタ+シーン重ね映像+「スケット団っす!」

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆☆

心えぐり度……☆☆☆☆

スケダン。ジャンプのギャグ漫画原作作品(私は原作全巻持ってます)。「スケット団」の3人がいろいろやる。基本的にくだらないギャグ作品なのだが、所々に感動要素やとてつもなく深い内容(3人の背景とか)をぶっ込んでくる、それでいてやはりくだらない内容なのがとても良い。銀魂みたいな作品、と言うのはどうでしょうか()。観ればわかります。全人類観てくれ。51話のED。


173. あさがおと加瀬さん。(2018/6)

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆☆

百合のOVA作品。軽すぎず重すぎず、ザ・百合という感じでとても良い。主題歌が某「卒業ソングと同じメロディーの恋愛ソング」。


174. Just Because!(2017秋)

OP…A1

ED…B2

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆☆☆☆☆

高3の冬にかつての地元に戻ってきた男子と、その周囲の高校生の青春群像劇。進路選択が重要なファクターになる等、テーマとしては半年前放映の『月がきれい』(こちらは中3)と若干近いところがある。やはり『月がきれい』と同様に精神的ダメージが大きい作品。なんなら成人の私にとっては、中学時代より記憶が鮮明な高校時代(私は男子校だったが受験経験が明確にあるので)をテーマにしている以上、それだけダメージが大きい。やなぎなぎの主題歌が響きすぎてさらにダメージが来る。キャッチコピー「あいつを好きな君の横顔が、たまらなく綺麗だったから——」良すぎんか。小宮、幸せになってくれ。OP(歌も映像も)がマジで良すぎる、特に主要登場人物が誰かに目線を向けているモノレール駅のところ。聖地は『青ブタ』(脚本の鴨志田一が原作)同様にガッツリ鎌倉・藤沢。


175. 中二病でも恋がしたい!(2012秋)/中二病でも恋がしたい!戀(2014冬)

OP…B2+B5、B14+B5

ED…B24、B4’

次回予告…なし(一枚絵)

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆

心えぐり度……☆☆

そのまんま、厨二病の奴らのラブコメ。ヒロインがめんどくさすぎるし、最初は(失礼ながら)視聴しててイライラしたが、設定が割とちゃんとしているので視聴している間に良作だと思えるように(私にとって1期最後まで視聴してなお嫌いだったSAO等とは対極的である)。基本的に全ての登場人物が推せる。まあ他の作品と比べても「現実にこんな奴いるわけないだろ」という思いを強く抱くような登場人物ばかりだが。それゆえか「オタクが好きそうな作品」。オタクが「小鳥遊」を読める原因の一つとなっているであろう作品。OPに主人公が出てこない系。京アニ。1期OPは他の作品に見られぬ独特の構成で、最後はハルヒと一緒。2期ED前半は地味に歌詞と連動してる。七宮、幸せになってくれ。


176. コードギアス 反逆のルルーシュ(2006秋〜2007冬)

OP…A14、A14、A14

ED…A2、A2

次回予告…タイトルのみ

頭空っぽにして見られる度……☆

心えぐり度……☆☆☆☆

史実と異なる歴史を辿った日本における、大帝国と少年の戦いの物語(第一作)。主人公が正義の側にいると断言できないため、他のロボットアニメと一線を画する作品か。別のオタクから布教された作品だが、まあこれは確かな名作。正義とは何か?問題解決のための手段として正しいのは何か?絶大な力をどう使うか?後に退けない状態においてどう振る舞うか?深い作品。最初のOPと2番目のEDがマジで良い。「自分を世界さえも変えてしまえそうな瞬間はいつもすぐそばに」


177. Aチャンネル(2011春)

OP…A6

ED…B4

次回予告…BGM+シーン重ね映像+ネタ(ユタカ&ミホ)+タイトル

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆

Aチャン。女子高生4人の日常。軽い……いや決して軽くはない百合。ザ・きらら作品。OP映像があまりにも特徴的(ヤマノススメセカンドシーズン前半と似てる)(というかヤマノススメの方が後発)。穏やかな曲に謎の勢いがある映像をあわせたOPだけでも何度でも見返したくなる。毎話、オリジナルのテーマ曲が流れる。


178. やくならマグカップも(2021春)/やくならマグカップも 二番窯(2021秋)

OP…A1、A14

ED…B24(メインキャラ不在)、B34

次回予告…「ミニミニ陶芸部」+まっどていえもん(&かみさま)の言葉+タイトル

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆☆

やくも。聖地は暑い街・多治見。30分枠の後半部分を声優による旅番組?にするという斬新すぎることをやってのけた。そもそも原作がそういう作品だったこともあり、地域おこしの側面がかなり露骨に出ているが、中身もそこそこ面白い作品。


179. みなみけ(2007秋)/みなみけ〜おかわり〜(2008冬)/みなみけ おかえり(2009冬)/みなみけただいま(2013冬)/みなみけ べつばら(2009/6)/みなみけ おまたせ(2012/10)/みなみけ 夏やすみ(2013/8)

OP…B5→A1+B3’、A24+B5、A1、A1+B3’

ED…B5+A2、B3、B3’、A2

次回予告…BGM+シーン重ね映像+ネタ+タイトル

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆☆

心えぐり度……☆

「南家3姉妹の平凡な日常を淡々と描いた」「過度な期待はしないでほしい」作品。非きらら作品の空気系の代表的存在だと思っている。かなりしょーもない作品だが、あらゆるキャラがちゃんと立っており(ただしケイコは不憫)いちいち面白い。……ただし2期(おかわり)を除く。2期だけめちゃくちゃ評判悪いし、確かにOP映像・ED映像が作風に不調和(1期とめちゃくちゃ違う)など気になる点がかなりある。3期は1期と同様の作風に戻った。3期12話のシャフトっぽさ・逆作画崩壊が良い(制作はアスリードだが)。4期は制作がfeel.になったためそれまでより作画が異様に安定しており安心して視聴できる。個人的には1期OPで出てくるのがちゃんとマコちゃんの方なのが最高。Wikipediaのマコちゃんの紹介「あまり頭の良くない少年」←直球で草。きもちわるい保坂抜きにこの作品を語ることはできない。


180. ココロコネクト(2012夏)

OP…A1+(B5→C4)、A1

ED…B2、B2+C24、B4

次回予告…シーン重ね+ED曲導入

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆☆☆☆

高校生を主役とした身体交換系の作品の一つ。ラノベ原作であり、そこそこシリアスかつ超絶「青春」が感じられる……がかなり下品。入れ替わった女子の胸を揉むのはこの作品ですでにやってた。OP映像における高校の描写(破壊力最高)も相まって、かなり青春コンプを刺激してくる作品。自己犠牲の是非や友人関係について等、考えさせられる作品。なんなら私にとってはオリジナルアニメ以外で最もダメージの大きいアニメ作品だったかもしれない。でもイジメコ……いえなんでもないです。あと、絵が声優の演技に若干負けている感。色々あったらしく、初回放送と再放送・ネット配信でOP映像同じに曲だけ差し替えられているが、そんなこと感じさせないくらい自然。むしろ個人的には差し替え後の方が「青春」感のある曲な気がしてしまう。次回予告の後にED。ED後の一枚絵はセクションごとに変わる。稲葉が一番可愛い。


181. 先輩がうざい後輩の話(2021秋)

OP…A3’+A1

ED…B4

次回予告…なし(一枚絵)

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆☆

巨体の男性の先輩のことがうざい?、小柄な社会人女子の話。原作はTwitter(現X)で作者が今も更新しており、『今どきの若いモノは』『うちの会社の小さい先輩の話』『じいさんばあさん若返る』系のTwitter発メディアミックス作品の代表例とも言えよう。


182. ゴブリンスレイヤー(2018秋)

OP…A24+B5

ED…C34

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆

私は正直ファンタジー系はあまり好きではない(設定理解にまず時間がかかるため)ため、この作品も「視聴しててもよく分からないんだろうな」と思いながら視聴し始めたが、しかしかなり設定が明快かつ「都合の良いことばかり起きるわけではない」「オタクの幻想を反映していない(某AOを想起しながら)」ため良い作品に思えた。他の作品と比べても、観ていてイライラする場面が少なかった気がする(主人公が報われない場面はあるといえ)。登場人物の固有名称が基本的に不明(役割名で呼ぶため)なのが特徴的。


183. 輪廻のラグランジェ(2012冬)

OP…A24

ED…B4

次回予告…シーン重ね映像+コメント(たまにネタ)+OP曲

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆

千葉県の鴨川を舞台に少女が戦うロボットアニメ。毎話のタイトルや次回予告等、鴨川をとんでもなく押し出しながら、「アニメ作品によるまちおこしに大失敗した例」としてしばしば語られる作品。鴨川市役所もやる気あったのにコケたと。2期も制作されたのに、もはや今の鴨川にこの作品とのタイアップの面影はない。とはいえ、視聴した感じだと奇怪な内容というほどではなく、若干下品とはいえシグルリ(館山)よりは余程マシ。世界観がかなり分かりづらいが、正直ファンタジー作品の苦手な私にとっては他の作品も同じようなものである。そこまで酷評される作品ではないと思った。……さて、なぜこれほどまでに大コケしたのでしょうかね。というか、館山ってこれの二の舞になるのでは、マジで。まあ「失敗した作品」として語られるだけマシである(『サクラクエスト』なんか現実の市が作品上の市と姉妹都市締結したくらいなのに話題にならなかったぞ)。「まるっ!」


184. はたらく細胞‼︎(2021冬)

OP…B4’→A14

ED…A2

次回予告…OP曲+ネタ?+タイトル

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆

生物(人体)の勉強になる作品の2期。1期より若干短い。うしろまえちゃん頑張ったね!ちなみに私は高1まで生物科が大嫌いだったのだが、この作品があれば違ったのだろうか……とも思う。


185. 七星のスバル(2018夏)

OP…B4→A1+B5

ED…B2

次回予告…BGM+ネタっぽく(デフォルメキャラ)

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆

『SAO』同じくMMORPG×現実世界の友情・恋愛モノで、一方で物語の背景としては『あの花』のような感じ。やはりラノベ原作。2期を想定していたのか、アニメでは根本の課題が解決していない状態で最終回を迎えており、物足りないところ(原作読めって話ですかね)。男女混合のパーティーだと人間関係やっぱり大変ですよね(棒読み)。これも私にとっては、アニメ視聴より前にOP曲とED曲を知った(Spotifyで出てきた)作品。


186. リコリス・リコイル(2022夏)

OP…A1

ED…B24+(シーン重ね)

次回予告…なし

頭空っぽにして見られる度……☆☆

心えぐり度……☆☆☆

リコリコ。「少女が平和のために戦う」「頑なだった少女が仲間と交流する中で変わっていく」そういった設定は割とありきたりな気がするが、しかしまあとても話題になった。やはり千束とたきなの関係性の描写が皆大好きということか。TwitterのTLをあまりにも賑わせた作品(まあ秋クールの『ぼっち・ざ・ろっく』の方が強かったが……)。(どうでもいいが)私はミズキみたいな残念美人系キャラ(他だと『僕らはみんな河合荘』の錦野麻弓とか)が個人的には推しである。押上周辺が聖地、「旧電波塔」は東京スカイツリー。第12話くるみ「あーもしもしポリスメン?」←ポプ子か?


187. ぼっち・ざ・ろっく!(2022秋)

OP…A4+B3’

ED…B4’

次回予告…タイトル表示+「見てください」

頭空っぽにして見られる度……☆☆☆☆

心えぐり度……☆

ぼっちがロックバンドをやる話。2022年アニメで一番と言ってもよかろう、とてつもなく話題になった作品。陰キャの解像度が高い上に、バグるぼっちだの溶けるぼっちだのやすりがけされるぼっちだのダム映像だのゲーミング虹夏だの意味不明(褒め言葉)な描き方がいろいろあって面白すぎる。ガッツリ青春してるはずなのに陰キャが観ても心が痛まない、というか別の意味で心が痛む()作品。最終話EDはアジカンの曲だけどめっちゃ良い曲ですよね。

 

188. すずめの戸締まり(2022/11)

頭空っぽにして見られる度……☆

心えぐり度……☆☆☆☆

昨年公開の新海作品。そもそものテーマが「地震」であって12年前の震災の話が登場するため、ほかの新海作品と比べても重い作品だと思う。「戸締まり」の日に駆け込みで観に行ったのだが、結論、観に行って良かった。まず自然災害という自然現象の「人間一般によって全く予兆なく、日常生活の中で突如起こる」「一瞬にして破壊し尽くしてしまい、思い出の場所や人が失われてしまう」という恐ろしさを、美しい風景描写によって残酷なまでに我々に想い起こさせてくれる。そしてそれは東京でいつ起こってもおかしくなく、日常生活を突如襲ってくるかもしれない。予測できるものではないため厄介だが、改めて現実世界における首都直下地震に対する恐れを強めると共に、ルーティンのように発される「行ってきます」の一言も突然終わってしまうかもしれない、大事にしようという思いが生まれたものである(少し逸れるが、併せて「お気をつけて」の言葉も大切にしようと個人的には思った)。またそれとは別に、(セカイ系あるあるだが)自らの定めとして人々の安全のために身を捧げる姿は美しいし、その者を自らの感情をもって救おうとする姿も美しい。結局恋愛要素のあるセカイ系の「美しい」系の作品であったが、扉の場所に向かう途中のアクシデントは普通に笑ってしまった。そして九州から三陸まで、聖地巡礼の捗る作品。宮崎県→愛媛県の航路(実在しない)乗りたすぎ!

 

長くなったが、以上!

[論32]人々の行動の結果としての、地域振興の難しさ

久々の記事の公開は、真面目な記事で。下書き自体は1年前から用意していたものの、持ち前の怠惰により清書していなかった記事である(内容的には昨年8月にでも出すべきであった)。

 

 


東京圏以外の人口増加(社会増)及び人口維持にかかる難しさについて、[論29]では主に「東京圏一極集中を抑制できない社会構造」「国や地域の施策」などマクロな視点から考えてみた。今回は「人々の行動」というもう少しミクロな視点から、アニメ作品の話も交えつつ考えてみたい。

utok-travelandthinking.hatenablog.com


※本記事に書いてある内容は全て筆者個人の主観である。作品を公然と批判する等の意図は一切無く、また本内容は筆者の所属組織等とは無関係である。

 

 

 

地域振興の難しさはアニメも物語る


本題に入る前に、前座として私の観たアニメの話をしておきたい。


昨年夏に公開されたアニメ映画『映画ゆるキャン△』(今はPrime Videoでも視聴可)。実は私は特典目当てで3回も観に行ったのだが、雑多な感想はいつか執筆する[雑]カテゴリーの記事に譲るとして、今回の記事に関係することとして「同映画を視聴すると『地域振興の難しさ』を垣間見ることができた」ということを述べておきたい。

勿論、創作における「創作された設定」を安易に「現実世界」と結びつけて論じるのは危険であり、なおかつ私の解釈が誤っている可能性も多分にある。ただ、創作は時に現実世界のある側面を示唆する、というのも間違っていないと思う。


〈主観の入った解説開始〉

まず『ゆるキャン△』は山梨県南巨摩郡身延町を中心とした地域における、キャンプ好きの女子高生達の姿を描いた作品である。今回の映画は彼女らが成長して社会人になった後、「キャンプ場を作る」という目的のために再集結している様子を描いている。

さて社会人というからには彼女らは就職しているのだが、メイン5人のうち地元の山梨県で働いているのは公務員or準公務員になった2人。しかもそのうち1人はUターン。それ以外の3人は三大都市圏(山梨県外)のいずれかで働いている(大学進学有無・大学進学に伴う転出有無は不明)。このような設定、どうも「地方公務員などとなる人材を除き、若年層が大学進学or就職を機に大都市圏以外の地域から大都市へと流出しがち」という現実を反映している感じがする。

キャンプ場を作るからには、開業後にその運営を担う人材が必要である。しかしメインの5人はそれぞれ仕事を抱えており完全に自由ではない。映画を観た感じだと、運営を担うのはメイン5人でなく、(うち地元にいる1人と)地域おこし協力隊のようだ。地域おこし協力隊が「地域おこし」という必ずしも明瞭でない仕事を与えられた存在だと考えると、どうも「移住者はじめ『自由に使える人材』が地域振興で重要な役割を担っている」という現実を反映している気がする。

メイン5人は、全員自動車(二輪含む)を運転して行動している。当然の事実ではあるが、どうも「大都市圏でなけれは基本自家用車必須」という現実につながるような気がする。

キャンプ場の建設予定地となったのは、かつて別の交流施設が存在した場所。その施設はかなり山奥で、使われなくなって放置されていた。どうも「差別化の難しい交流施設は、アクセスが悪いと先行き良好と限らない」という現実を反映している気がする。

……しかし、ここまで述べたこと以上に私が着目したのは、この物語が山梨県を舞台にしている、という点である。メインの5人のうち3人は山梨県外に住んでいるが、キャンプ場を作るためorその他の理由で実家に帰るため、頻繁に山梨県内に自動車で来ている。山梨県は関東からすぐ来ることができる(なんなら山梨県は首都圏)し、名古屋からも遠くはない。これが青森県高知県とかだったらどうだろうか。……「定住人口でなく関係人口を獲得or維持するにしても、仕事のある地域からの近接性・アクセスが物を言う」という残酷な現実を反映している気もしなくはない。

〈主観の入った解説終了〉


こう、映画ひとつからもそれなりに地域振興のいろいろを感じることができるのだが、『サクラクエスト』という全24話のテレビアニメはもっと凄い。富山県の「間野山市」(モデルは南砺市)における観光振興を描いた作品なのだが、現実の地域振興に付随する問題を非常によく描写している。(今から6年前の2017年放映、オタク受けしない?内容ゆえさほど話題にならなかったが、私としてはもっと評価されてほしい作品ダントツNo.1。)

以下、この作品の話をしつつ、この記事の本題に入っていこうと思う。


(注記:「田舎」という用語が未定義の状態で多用されているが、「多くの人に『田舎である』と認識されている場所」という再帰的な定義で用いているということにしたい。)

 

 

 

魅力的な職がありそうな大都市圏を目指す→人が流出する


「地方公務員などとなる人材を除き、若年層が大学進学or就職を機に大都市圏以外の地域から大都市へと流出しがち」


サクラクエスト』の主人公・木春由乃(『ゆるキャン△』の各務原なでしこと同じピンク髪)は、海沿いの田舎の出身だが地元での就職を拒み、「特別な何かになりたい」といって東京での就職を希望した。地元での就職を拒んだのは、端的には地元の仕事に魅力を感じなかったから。

一方、主要登場人物5人のうち1人・織部凛々子は間野山に生まれ育ち、間野山以外の世界を見てこなかった。そもそも、間野山を出るということ自体を考えていなかった。


[論29]の「本当に『雇用の創出』だけで良いのか?」において、私は以下のようなことを書いていた。つまり、職自体はあれど選択肢の限られる大都市圏以外より、選択肢の豊富な大都市圏の方が人々の多様な志向に合致する可能性が高く、ゆえに大都市圏での就職が選ばれるということだ。

地方移住者が生活できているのは(不労所得で生活している人でなければ)、その人がもともと職を持っているから(リモートワーク可能な職など)、あるいは移住先で職を得たから(新規就農者など)である。このような移住者がいるということは、地方には職はゼロではないということの裏返しである。

一方で、それが「魅力的な職」であるとは限らない。例えば農業は一部の人にとって魅力的な仕事だが、私をはじめとする大多数の人にとっては「必要性は分かりつつも積極的にはやりたくない仕事」であると思われる(農業人口の減少がこれを物語っている)。「素晴らしい観光地だから無くなってほしくない」という人に対して「じゃあそこで観光業に従事すれば?」と言うことはできるが、そう言われた人が全員「そうだね観光業に転職するよ!」と言うとは限らない。職の選択肢が限られている地域においては、何に「魅力」を感じるかという主観的な感覚が個人個人で異なる中、数少ない職のどれも「魅力的」とみなされない可能性がかなり高い。

それに比べて都会(東京圏)には、職に関して数多くの選択肢が用意されており、主観的な「魅力的」という指標に合致する確率も高くなる。


さらにこれに続くのが、以下の一文である。

そして国や企業の中枢は東京圏に置かれるものが多く、「高みを目指す」人にとっては東京圏で得られる職こそ価値あるものとなる。

私自身は「高みを目指す」人の多い大学および職場に身を置いてきた(←最高にムカつく言い方!)が、このレベルの大学及び職場は大都市圏以外にはなかなか無く、「高みを目指す」大都市圏以外出身者はどうしても大都市圏に来てしまう気がする(医者除く)。そして大都市圏の大学に来るとそこには大都市圏出身者が多く、大都市圏出身者にとっては大都市圏での就職が「普通」である(※)ため、就職で地元に戻るというのは選択肢に入りづらくなってしまうと思う。

(※:大都市圏で生まれ育つと(少なくとも私の経験上)、地元が大都市圏なのだから「地元に戻る」も何もなく、よほどの理由がない限り大都市圏を出ての就職は「ゆかりのないかつ条件の劣る仕事にわざわざ就きに行くイレギュラーなもの」と映ってしまう。)


加えて、実際に大都市圏の職に魅力があるか否かにかかわらず、木春由乃のように大都市圏での就職に過大にも近い夢を見てしまう、という側面も否定できないのではないか。


「選択肢が多い」「高みを目指せる」「夢がある」この3つの要素による「大都市圏の職が魅力的に思われる」という状況で、地域の貴重な若年層が大都市圏に流出するから、地域振興の担い手がいなくなっていく。


ただし当然のことながら、大都市圏の職が魅力的に思われるという状況下でも非大都市圏の若年層は完全にゼロになっているわけではない、ということは留意しておく必要がある。織部凛々子のように、必ずしも上昇志向を持たず(←悪口ではなく客観的な記述)大都市圏の職を求めない場合、大都市圏をまなざさず地域に止まる。現実、私の地元(東京圏だが郊外ゆえ地元就職も多い)の友人においても、私の母方の地元(首都圏だが中山間の過疎地域)のいとこにおいても、特段東京での就職を希望せず地元に住み続ける者は当然に確認できる。

 

 

 

労働者は決まった時間労働する→地域振興にガッツリ携われる人は限られる


「移住者はじめ『自由に使える人材』が地域振興で重要な役割を担っている」


サクラクエスト』において、東京での就職に失敗した主人公の木春由乃は、見知らぬ土地・間野山において観光振興という仕事を図らずも与えられ、観光協会会長・門田丑松のもと奮闘する。間野山の観光協会には、四ノ宮しおりという地元出身の女性職員がいた。このほか地元出身の緑川真希・織部凛々子および移住者の香月早苗を含む、計5人の女性で観光振興活動を進めていくが、真希と凛々子は実質無職、早苗はフリーランスであった。


先ほど、非大都市圏の若年層は完全にゼロになっているわけではない、とは述べた。しかしながら現実において、管見の限り、地元に住み続けている若年層が地域振興にガッツリ関わる例はさほど多くなく、むしろ移住者や高齢者ほど積極的な気がしてならない。

私はこれについて、上昇志向のない地元若年層は何もしなければ地域が消滅しかねないという事実を知るきっかけに欠ける(←悪口ではなく客観的な記述)(※)という要素に止まらず、定職の有無および性質が影響しているのではないか、という仮説を唱えたい。すなわち地元に住み続けている若年層は、四ノ宮しおりのようなそれを仕事にしている者、あるいは緑川真希や織部凛々子のようなフリーターor無職でもない限り、フルタイム労働者であるが故に自由に地域振興活動に参加することができないがちということだ。(この理論だと大学生は参加しやすいだろうが、そもそも大学のない田舎には大学生など殆どいない。)

これに対して移住者は、大半が「消滅に向かっている地域」という認識を有した上で移住を選び、かつある程度仕事の融通が効く状態(地域おこし協力隊その他地域振興関係の仕事、休学中か休暇中の大学生、フリーランス、リタイア者等)であり、香月早苗のように地域振興活動に参加しやすいと考えられる。

(※:私自身、自分の地元における人口減少・少子高齢化に伴う問題については、大学入学後に『地方創生』概念に触れたことでようやく自覚したものである。上昇志向の有無にかかわらず、何もしなければ地域が消滅しかねないという事実は、意外と知るきっかけが限られているのかもしれない。)


この事実は、自治体の「地域おこし体験」的なものがやたらと地域外の大学生を対象にしている、という事実につながっていると思う。なぜなら大学生は、人的資源として動かし/動いてもらいやすいという意味で「自由」だ(と思われている)から。

地域振興における不自然なまでの「よそ者」「若者」信仰、場合によっては従来の住民を蔑ろにするこの考え方も、「自由に使えるから」「自由に動けるから」という要素ゆえのものなのかもしれない。


地域の若年層が必ずしも地域振興を担わない以上、「自由」な移住者を獲得できない地域では、地域振興が進まない。

 

 

 

自分にとって生活しやすい場所を選ぶ→田舎は選ばれづらい


「大都市圏でなけれは基本自家用車必須」


サクラクエスト』では、JR城端線に相当する鉄道路線が登場するほか、現実の南砺市営バスと同じ車体の路線バスが登場する。しかし特に後者においては、「本数が無く不便な存在」あるいは「基本的に乗客がほぼいない路線」として描かれる。


私の母方の地元もそうだが、基本的に大都市圏を除けば公共交通機関というのは使い勝手が悪い。なんなら私の地元もそうで、行きつけの美容院までは4kmほどあるのだが公共交通機関で行くのは困難である(可能ではあるが大迂回で、徒歩以上に時間がかかる)。

都会に限った話であろうが、若者の車離れという言説がある。所有(若者の金がないから所有できないとは言われる)どころか運転もその傾向がありそうで、鉄道のない沖縄は旅行先として若干忌避されているらしい。路線バス大好きの私からすれば「路線バスでまわれば良いじゃん」という感じだが、そもそも路線バスは鉄道ほど一般的に移動手段として認識されづらいようである。

……となると、鉄道は日常の移動経路にそぐう路線でなく、路線バスは本数が少なすぎて普段遣いできたものではない、そういった地域は「車離れ」している都会の若者にとっては非常に暮らしづらい、どころか暮らすのが不可能に近いとも言える。


……もっと話を広げてみよう。


サクラクエスト』の香月早苗は地方移住において、数ある地域から間野山を明確な理由をもって選んだわけではないし、虫が嫌いな彼女は田舎暮らしに馴染めず東京に帰ることを検討していた。


先ほど、移住者の存在が地域振興において重要であるみたいなことを述べたが、そもそも(定職又は不労所得等により暮らせるという前提のもと)移住を志す者は移住先として「自分にとって生活しやすい場所」を選ぶと思われる。この「自分にとって生活しやすい場所」は、自分の苦手なものや嫌いなもの(自家用車の運転、虫、地縁的結合など)が無い、あるいは自分の好きなもの(自然、魅力的な住民、地縁的結合など)があるといった根拠により判定されるはずだ。

要は、多くの人にとって「自分にとって生活しやすい場所」と捉えられる場所こそ、多くの移住者を集めることができ、地域振興が可能になるのである。これは逆に言えば、誰にとっても「自分にとって生活しやすい場所」でない地域、すなわち人々が苦手なものや嫌いなものだらけ&人々の好きなものが少ない地域には、人は移住してこないということでもある。地域に人を集めたければ、その地域には「自分にとって生活しやすい」と多くの人に思わせる要素が必要だ。


では、多くの人にとって「自分にとって生活しやすい」と思わせる要素とは、なんだろうか。これは[論29]の「「田舎」は本当に魅力的なのか」にも別の書き方で書いてある内容だが、私の主張の根幹なのでほぼ同じ内容をもう一度論じておく。


まずは移住者の声から見てみよう。「なぜここ(移住地)を選んだのか?」という質問への移住者の回答として、耳にタコができるほどよく聞くのが「住民(の温かさ)」である。(まあとりあえず無難な回答だからって適当にこう答えただけで本心は『適当に選んだらたまたまこうなった』ってような人も多いだろうけどそれは置いといて)こうやって答える人は要は「人とのつながり」が「自分の好きなもの」で、だからこそ移住先が「自分にとって生活しやすい場所」であるのだろう。そういう移住者の言葉の裏にあるのは、「都会は人のつながりが薄くて物足りないor怖いorつまらない」という観念である。

しかし考えてみれば、都会で人のつながりが薄いというのは、都会の住民がそうなることを望んで行動してきたことの帰結とも捉えられる。必要最低限の付き合いのみにするというのは、分業化された社会においては合理的な選択だろう。しがらみがないことは住民個々人の縛られない生活を可能にし、「都市の空気は自由にする」ともいう。となると、「都会は人のつながりが薄くて物足りないor怖いorつまらない」という観念は、むしろ都市に居住する住民からすれば「人のつながりが薄いから良いんじゃん……」という風に捉えられる可能性もあるのだ。(なんなら私もそう思う。)


もう一つ留意したいのは、早苗のように「自分にとって生活しやすい場所」と思って移住してきたものの、自分の苦手なものがあるため実は「自分にとって生活しやすい場所」ではなかったため結局出ていってしまいそうになる(あるいは出ていってしまう)、ということも十分あり得るということだ。

さらに厄介な話として、全ての地域住民が移住者を心から受け容れる訳ではない、というのもある。こちらも少し前の話になってしまったが、福井県池田町の「池田暮らしの七か条」や、高知県土佐市のニールマーレの件を思い出して欲しい。「郷に従わない」移住者は白い目で見られるし、場合によっては客観的に見ておかしいような方法で排除される。(もちろん、全ての地域がそういうわけではないと信じているが)(『サクラクエスト』でもそういうエピソードがあるように、場合によっては移住者側が全面的に悪く擁護の余地が無いこともあるが)。


結論、多くの都市住民にとって田舎は「自分にとって生活しやすい」場所ではなく、また「自分にとって生活しやすい」と思っていても実は違うということが多々発生する、それが事実だと考えられる。

隣の花は赤いし、隣の芝生は青い。自身の置かれた環境に対する欠点がどうしても目につきがちで、その欠点を補える環境において別に存在する欠点には、なかなか目が向きづらいのだろう。


多くの人にとって「生活しやすい」と感じてもらえる地域でなければ、移住者の獲得は困難。しかし人口の大半を占める都市人口において、田舎に「生活しやすい」と感じることは多くない。

 

 

 

アクセス・宿泊環境・訪問目的の劣るところに積極的には行かない→それら要素の足りない地域は圧倒的不利


「差別化の難しい交流施設は、アクセスが悪いと先行き良好と限らない」

「定住人口でなく関係人口を獲得or維持するにしても、仕事のある地域からの近接性・アクセスが物を言う」


サクラクエスト』では、地域振興としてとある大きなイベントが開催された。そのイベントにおいては人気ロックバンドのライブ開催が実現し、間野山の外から大量の客が押し寄せ、過去に例を見ないほどに賑わった。しかし間野山に宿が不足していたため宿泊は近隣地域に流れてしまい、しかも客が押し寄せたのはライブ当日のみでその後は元通り閑散、リピーターが来ることもほぼ無く特典として配布された商品券も全く使われず、効果はごく限定的・一時的なものにとどまってしまった。


ここでは定住の話から離れ、その地域に定住していないが当該地域に良い効果をもたらす者にフォーカスして考えてみたい。定住者の獲得競争が減っていくパイの奪い合いであるのに対し、こちらは全体の総和が増えていく可能性があるのでより期待できよう。

まず、定住者以外から地域に与えられる良い効果として最も想像しやすいのは、観光による収入であろう。観光資源の存在により、当該地域に全く縁のない者を集客できれば、その者が地域に金を落とすことで地域経済が潤う。ただし高々一泊二日程度の旅行で人一人から落とされる金額はさほど多くないため、大きな効果を見込むのであれば当然ながら「大量の者に来てもらうこと」が必要となる。この場合、就業の考慮等が不要な点で移住より圧倒的にハードルは低いが、その地域には「観光に行きたい」と多くの人に思わせる要素が必要だ。

一方、経済効果を超えた可能性を見込めると思われるものとして、「関係人口」という形での地域への参画も存在する([論29]の「地方自治体における「関係人口」の意義」で言及しているので参考にされたい)。当該地域の出身者が定期的に帰省することで金を落とすことのほか、全く縁の無かった者が何らかの縁で頻繁に通うようになり金を落とす、場合によっては地域振興の政策的援助を行うことで単に金を落とす以上の効果をもたらす、といったことも期待可能である。ただし例えば「1回来て提言しただけで終わり」「10年に1回の頻度でしか来ない」などであれば効果は極めて限定的だし、大きな効果を見込むのであれば「特定の者にそれなりの頻度で継続的に来てもらうこと」が必要となる(※)。この場合、観光集客同じく移住より圧倒的にハードルは低いが、その地域には「何度も足を運びたい」と思わせる要素が必要だ。

(※:オンラインコミュニケーションツールの発達した現在、オンラインのみでも密接に繋がることは不可能では無いが、まずオンラインだと地域に金が落ちないし、政策的援助の観点でも現地を見た方が適切な提言ができることは論を俟たないだろう。)


では「観光に行く」「何度も足を運ぶ」が実現しやすいのはどういう場所か。

まず、どちらにおいても「居住地からのアクセスが良い」が要素として存在することは間違いなかろう。例えば極端な例、小笠原諸島がいくら魅力的だったとしても、行って帰ってくるのに基本1週間かかるから多くの社会人にとって観光のハードルは高いだろうし、高頻度で帰省や訪問をするなど困難極まりない。そして東京圏の人口が多い現状において、これは東京圏からのアクセスが重要であるということを意味する。現実の事例だと、アニメによる地域活性化の成功例(「観光に行く」メインだが「何度も足を運ぶ」の側面もあり)として知られる鷲宮・大洗・沼津・秩父などはいずれも東京からさほど遠くない(※)。作品世界において間野山のリピーターが現れなかった理由として東京圏からの距離があるかどうかまでは必ずしも読み取れないが、一要素として存在すると考えるのは不自然ではないと思う(ちなみに現実世界でも、南砺市の頑張りにかかわらず『サクラクエスト』の聖地巡礼は残念ながら賑わっていない印象である、これもアクセスが悪いせい?)。

関連して、どちらにおいても「宿泊施設がある」も無視できない。例えば大洗の場合、以前から観光地であったために宿はそこそこ存在していたという。一方、鷲宮のような日帰り可能な場所ならさておき、宿泊が必要な遠さなのに宿泊施設が一切無い或いはあっても著しく高額であるといった場所だったら、(実家や宿泊可能な知人宅がその地域に存在する者が「何度も足を運ぶ」場合を除き)人々は行くのを躊躇うだろう。間野山のように近隣地域でカバーすることも可能といえ、その分宿泊にかかる金は近隣地域に吸い取られてしまう。

そして何よりも基本となるのは「訪問する目的となるものがある」である。当たり前のことを言っているようだが、ライブを目的として訪問してきた者は、ライブの他に目的が無ければ訪問しない、ということだ。「目的となるもの」を突発的なものでも作れれば間野山のように「観光に行く」を喚起し大量の訪問者を集めることができるが、あくまでも一時的にであってそれが消えた瞬間に「観光に行く」は雲散してしまうし、訪問者に「〇〇目的で来たけど実は××も面白いことが分かった!また来よう!」「調べたら△△が大きな問題になっているんだな……地域を守るために自分も力になれれば」と思ってもらえなければ「何度も足を運ぶ」は実現されない。加えて、本来目的である〇〇のためだけに来ておりその他の要素には一切関心がなく、「目的となるもの」となる可能性を秘めた××や△△に気づく(誰かがそれに気づかせる)ことが極めて困難である訪問者も多いだろうから、目的の移行による「観光に行く」から「何度も足を運ぶ」への転換は容易で無い。さらには、そもそも〇〇自体が地域に何の良い効果ももたらさない場合だってあるから、「目的となるもの」の質も重要となる。

ある2地域を考えたとき、他の要素が共通しているとして、これらアクセス・宿泊環境・訪問目的の3要素で劣位に立っている地域は選ばれづらいだろう。そして厄介なことに、アクセスの改善は一地域の頑張りではどうしようもない部分が大きいし、宿泊環境の整備は時間を要するし、訪問目的の形成は今日の情報社会においては「都合良くインフルエンサーが関わってくれるか」「バズるかどうか」の世界であり半ば運ゲーである(人気バンドが関わってくれた間野山は相当幸運な事例だろう)。

(※:この章においては余談だが、[論29]の「結局、地理的条件と人」で述べている通り、定住人口獲得の勝者である流山市明石市も結局アクセスが良いのである。)


観光客の確保にしろ「関係人口」の形成にしろ、アクセス・宿泊環境・訪問目的の3要素は基礎となり、ここにおいて他の地域に敵わない地域は非常に不利である。


ここまで、実は『映画ゆるキャン△』から(筆者が偏った見方で)読み取れた内容をベースに書いてきたが、ここから2章はそれを超えた内容を書いていこう。(疲れてきたので雑になります。すみません。)

 

 

 

「地域にこうなってほしい」というそれぞれの想いがある


サクラクエスト』において、主人公達(観光協会)の企画した地域振興の取り組みに対して商工会から「そんなことは望んで無いんだよ」という意見が上がるシーンがある。


マクロ的視点からの記述がメインであった[論29]において、私がどうしても主張したかったが故にミクロ的視点でありながら取り上げたのが「積極的な『よそ者』に問う、その課題意識は本当に適切か」であり、以下のようなことを書いていた。

「よそ者」として「地域づくり」に従事する人は、場合によっては明確な課題意識を持って地域へやって来る。その際、「住民の皆さんにまちづくりの楽しさを知ってもらいたい」「住民の皆さんに誇りを持ってもらいたい」「ブランド力のある街にしたい」みたいなことを言う人がいる。

 

……「よそ者」のエゴを押し付けるべからず。


実際、私の居住する地域について、「よそ者」が「住民は地域に誇りを持てていないから変えなければならない」と述べたことがあった。それを知った私は、「舐めてんのか?住民のこともよく知らない分際で」と怒り狂いそうになった。

私は自分の居住する地域が「魅力的」とは思っていない一方、愛着と誇りは持っており、ただし「ずっと存続してほしい」とも思っていない。別に私からすれば、この地域が「消滅可能性都市」として消滅に近づいていくことは、仕方ないことだと割り切っているのである。むしろこんな不便で高齢者だらけの住宅街が人口を吸収するくらいなら、農山漁村に人口を振り分けた方が100倍良いとすら思っている。

「住民はこう思っている」という決めつけは、その「よそ者」のエゴかもしれない。そしてこれこそが、「よそ者」が地域に入ってくる上で生じる難しい点だと思う。

 

明確な課題意識を持って地域で何かをする人がいるけれど、それを「地域のためになる」と本気で考えているのであれば、それは危険だと思う。

それよりは「自分がやりたいからこうする」と言った方が、まだマシ。

さらには「まだマシ」とはいえ、その行動のモチベーションが「地域のためになる」でなく「自分がやりたいからこうする」だったにしろ、そこにあるのはあくまでも「自分がやりたい」である。至極当然であるが、それは必ずしも「みんながやりたい」とは一致しない。


「よそ者」と地域住民の思惑が異なる場合のみならず、そもそも地域住民の中で「みんながやりたい」の合意が取れていない場合だってあるだろう。ある人が「自分がやりたい」と思っていることをやるべきでないと思う人、あるいはやってもらってもいいが自分はやりたくないという人がいてもおかしくない。強固なコミュニティだったとしても、全員が全く同じことを考えているとは限らない。

というのもそれぞれ立場は微妙に異なるため、それぞれの立場の者が合理的に考えたところで「こうあって欲しい」の姿はどうしても違うものとなってしまうから。何としてでも観光客を誘致したい観光協会と、観光客不在ながら生活ができておりオーバーツーリズムの問題も懸念する商工会では、どちらも地域のためを真剣に思っていながらも「こうあって欲しい」の姿は対立するだろう。さらに場合によっては権力関係も絡んでくるので、厄介だ。

そこでしっかりとした合意ができず、「自分がやりたい」を独断で進めたところで、人は対立した状態の者に積極的に手を貸したくはないだろうし、協力者が失われるだけである。すると、地域のことをよく知る当人が真に地域のためを思って実施している取り組みであろうと、どうしても効果は限定的にならざるを得ないだろう。


住民間でも個々の立場は異なるのだから、今後の地域に求める姿は、必ずしも住民間で一致しない。「自分がやりたい」を押し出しすぎて対話ができないと、地域振興は破綻する。

 

 

 

移住者はその地域を「捨てる」ことができる


サクラクエスト』の主人公である木春由乃は、地域振興においてかなり中枢的な仕事をしていた。しかしその仕事は、そもそも一年間の契約であった。それが終わった時、由乃は……。そして、担い手のいなくなったその仕事は……。


由乃が実際にどうしたかは視聴して確かめて欲しいが、選択肢として「その地域に残る」のほか「地元に戻る」というものもあるのは確かである。移住者においてはルーツとなる土地が他にあり、元々の住民のように「ここしか無いので逃げたらやばい」という状況では無いため、本当に困ったら逃げることは難しくないし、困っていなくても特定の出来事を機に離れることが容易にできるだろう。「地域おこし協力隊」の任期終了後の定住率が決して高くないのも、この事実の裏返しだろうか。

また、由乃のやっていた仕事が実際にどうなったかも視聴して確かめて欲しいが、属人的な業務であれば引き継ぎ先が現れず霧消してしまう可能性もあるのは確かである。そもそも人手が絶望的に不足している地域であれば、属人的業務でなくとも貢献者が一人減るのは大打撃だろう。


移住者に頼っていると、その移住者がいなくなった際に困ることがある。しかし移住者はいなくなることが比較的容易。

 

 

 

さて、ここまで以下の内容を論じてきた。


・「選択肢が多い」「高みを目指せる」「夢がある」この3つの要素による「大都市圏の職が魅力的に思われる」という状況で、地域の貴重な若年層が大都市圏に流出するから、地域振興の担い手がいなくなっていく。


・地域の若年層が必ずしも地域振興を担わない以上、「自由」な移住者を獲得できない地域では、地域振興が進まない。


・多くの人にとって「生活しやすい」と感じてもらえる地域でなければ、移住者の獲得は困難。しかし人口の大半を占める都市人口において、田舎に「生活しやすい」と感じることは多くない。


・観光客の確保にしろ「関係人口」の形成にしろ、アクセス・宿泊環境・訪問目的の3要素は基礎となり、ここにおいて他の地域に敵わない地域は非常に不利である。


・住民間でも個々の立場は異なるのだから、今後の地域に求める姿は、必ずしも住民間で一致しない。「自分がやりたい」を押し出しすぎて対話ができないと、地域振興は破綻する。


・移住者に頼っていると、その移住者がいなくなった際に困ることがある。しかし移住者はいなくなることが比較的容易。

 

結論、人々の行動の結果として、やはり地域振興にはかなりの困難が伴いそう、ということになる。『サクラクエスト』だって、アニメ作品にしては現実の残酷な側面を誇張なしに如実に描いていると思う(少なくとも『映画ゆるキャン△』よりは)が、一方で現実サイドからしたら「現実はこんなにうまく行かない」というコメントが上がるくらいである。


……さて、このまま悲観的な結論で終わってしまいそうだが、何か少しでも状況を良くする糸口は無いのだろうか。そう考えて、私の頭の中では「田舎への憧れ」というワードが思い浮かんだ。

 

 

 

都会から田舎に憧れる


確かに田舎は定住するには不便だし、観光にも「関係人口」になるにしても地域による。


しかしながら、先述の大都市圏以外から大都市圏に夢を見る現象と似たような形で、都市から田舎に憧れを覚えるという現象も存在するのではないか。それも政策により無理やり喚起されているものというより、自然に形成されているものとして。

個別のタイトルを挙げることはここではしないが、ゲームやフィクションでも「田舎で過ごす夏」を美化した形で描写する作品が多数存在し、そしてそれらに何らか感情を動かされている人は少なくないのではないか。「日本の夏」「日本の原風景」というワードから、青い空・一面の水田・背景の緑の里山という景色を思い浮かべる人は少なくないのではないか。先述のようなハードルにより断念しつつ、田舎を魅力的なものと考えて田舎への移住に憧れを持つ人は、決して少なくないのではないか。

今や首都圏人口が多数を占め、その他の地域でも住宅街での生活が多く、農山漁村集落で暮らしている人々は日本人全体からしたら僅かであると思われる。しかしそれでもなお、人々において田舎での生活に対して何らかの良い感情が形成されるというのは、少し面白い現象のような気もする。「隣の花は赤い」だけでは必ずしも説明できない、何らかの理由があるような気もするし、人々の集合における憧憬が社会的に構築されていると考えたら本現象の背景を分析する価値もありそうである(私が調べていないだけで既に論考があるとかならすみません)。


事実として先述の通り、田舎は都市住民の大多数にとって生活しやすい環境ではないだろうし、生活しやすいと思っていても実は違ったという現象も多々生じるだろう。しかしながら「憧れを持ち、生活を考える」だけなら自由である。そしてその憧れの強さゆえに、移住や「関係人口」化の際の現実とのギャップも許容範囲が広くなる(※)、すなわち移住や「関係人口」化が厳しい状況下ながら進んでいく、そういう可能性もあるのではないかと思う。

(※:憧れを持ちすぎて現実にすぐ失望してしまう、という形で逆に働く可能性もあるので注意が必要。)


「田舎での憧れ」という何らかの理由で形成された観念が、この厳しい状況下における地域振興の可能性を握っているのかもしれない。

 

 

 

最後に蛇足かもしれないが、『サクラクエスト』1クール目オープニング曲『Morning Glory』のCメロ→ラスサビ(アニメでは流れない)より。

 

夢見てる場合じゃないなんて誰が決めたんだ

ネガティブはゴミ箱へ捨ててゆこう

晴れのち雨、現実と理想の大体はすれ違ってばかりだけど

自分のペースで見つけていけたら

なにか変えられるかな